科戸の風は涼し

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 鈴村は芹野の絵について知りたかった。  今の自分にピッタリとはまるような絵がそこにあり、その作者がそこにいる。鈴村は自分にとって必要なものがその絵から見つかるような気がした。  相手はあの芹野美羅だとしても、出てけと言われていても、話を聞きたかった。 「その絵……何を考えて描いてるの?」  聞きたいことは山ほどあったが、絞り出た言葉はそれだった。対して、芹野は鈴村の言葉を無視した。  いつもなら仕方がないと諦める鈴村であったが、その様子を見ても退かず、先ほどよりもはっきりとした口調で言った。 「その絵、何を考えて描いてるの?」  その言葉を発した後、芹野の眉間がピクリと動いた。 「お前、3組の鈴村甲斐(すずむらかい)だよな」  鈴村は自分の名前が知られているとは思わず少し驚いた。 「そうだけど……」  今にも怒り出しそうな芹野の様子に、鈴村は下手なことは言えなかった。 「私、お前みたいなやつ、嫌いだ。お前、勉強で学年一位だよな? それに部活でも表彰とかされてたよな? そのくせ、できても何も思いませんみたいにしてるのが鼻につく」  鈴村は芹野の怒りが徐々に込みあがってきているのを感じた。 「できない人間の苦労も知らないくせに! こんな時だけ面白がって絡んでくんな! 出てけ!」
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