0人が本棚に入れています
本棚に追加
鈴村が学校へ来る頃には、既に芹野は絵を描いているというのが普通だった。
鈴村が朝早くに学校へ来たとしても、芹野の方が早く来ているため、鈴村は芹野がいつ学校に来ているのか不思議だった。
それに加えて、鈴村の帰宅後も作業を続けているようだった。
「芹野って、毎日何時間くらい学校にいるの?」
「数えてないから知らん。家で寝るとき以外はここに来て描いてる」
それだけ熱中できるものがあるというのが、鈴村にとっては羨ましかった。
「どうして、そんなに続けられるの?」
「私にはこれしかないから」
芹野の声色はいつにも増して強かった。
「鈴村は勉強も運動もできて、友達もたくさんいるだろ。でも私は友達いねえし、何もできない。だから、描くしかないんだ」
芹野は言葉を続ける。
「夏の終わりごろ、日本で最も大きな18歳以下の絵のコンテスト『U18コンテスト』が開催される。そこで結果を残すと画家として道が開かれる。私はこの作品で入賞して、自分の存在を肯定したい」
強い意志のこもった言葉だった。
最初のコメントを投稿しよう!