科戸の風は涼し

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 鈴村が学校へ来る頃には、既に芹野は絵を描いているというのが普通だった。    鈴村が朝早くに学校へ来たとしても、芹野の方が早く来ているため、鈴村は芹野がいつ学校に来ているのか不思議だった。  それに加えて、鈴村の帰宅後も作業を続けているようだった。 「芹野って、毎日何時間くらい学校にいるの?」 「数えてないから知らん。家で寝るとき以外はここに来て描いてる」  それだけ熱中できるものがあるというのが、鈴村にとっては羨ましかった。 「どうして、そんなに続けられるの?」 「私にはこれしかないから」  芹野の声色はいつにも増して強かった。 「鈴村は勉強も運動もできて、友達もたくさんいるだろ。でも私は友達いねえし、何もできない。だから、描くしかないんだ」  芹野は言葉を続ける。 「夏の終わりごろ、日本で最も大きな18歳以下の絵のコンテスト『U(アンダー)18コンテスト』が開催される。そこで結果を残すと画家として道が開かれる。私はこの作品で入賞して、自分の存在を肯定したい」  強い意志のこもった言葉だった。
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