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鈴村は自分に欠けているものを彼女が持っていると強く感じた。
確かに鈴村はなんでもできた。勉強も運動もできて、交友関係にも困ったことはなかった。
それでも、満たされないものがあった。
いつか小説で賞を取りたい。
その思いは持っていた。
しかし、その「いつか」というのは時間が経つにつれてさらに未来へと向かっていき、目標はただの夢へと変化しようとしていた。
対して、芹野は向き合っている。
僕はしっかりと小説に向き合えていただろうか。
勝手にあきらめる準備をしていただけではないのか。
夏休みの間、鈴村は毎日学校へ行き、芹野の元へと足を運んだ。
初めのうちは会話も少なかったが、次第に芹野の口数も増えていった。同時に鈴村も芹野のことを理解していった。
ドロップキックをされた日は横暴な人だと思ったが、その印象は変わっていった。
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