第二話「君死にたもう事なかれ」

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第二話「君死にたもう事なかれ」

第二話「君、死にたもう事なかれ」 柊の個人的趣味の一つに、犯罪心理学があった。 正義感が強い。悪の要素等、微塵も無い彼の脳内。 確かに存在する、自分と全く別ベクトルの人間が、どうして犯罪を犯すのだろうか。 何故に非合法と知る行為に手を染めるのか。 全く賛同できはしない。 しかし、犯罪心理学を学ぶうちに、犯罪の力学というものは理解する事ができた。 欲望を押さえられない人間。 人間には、欲望を抑える「理性」と呼ばれる自律機能が備わっている。 動物にはそれが無く、欲望通りに行動する様を、人は野生と名付けた。 人でありながら野生が勝っているタイプ。 今柊の前に立っている2人は、まさにその象徴と言えた。 女性を後ろから抱えている男はおそらく格闘技経験者。 片羽締め、という、右腕と首を同時に極める技で彼女の動きを止めていた。 女性の動きを止めた、初手のボディブローも、練習の成果が現れている出来映えだった。 「君たち、やめなさいっ!」 1メートルの地点まで接近した時、柊は叫んだ。 こうした時に事態を制しようと叫ぶ。 これは、完全に悪手である。
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