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人数でも見た目の武力でも勝っていればそれは牽制と呼べる物になる。
しかし明らかに劣っているならば、それはそよ風が吹いた程度に相手の心を素通りする所行となるからだ。
こうした場合は一般的に警察に通報するだけだろう。
人数でも戦闘力でも劣る場合にどうしても何かしたければ、不意打ち以外に手は存在しない。
しかし、柊は違った。
警察に通報する前に走らずに、叫ばずにいられなかった。
おまけに不意打ちのような卑怯な手も、頭に浮かばなかった。
彼は、真面目だった……。
ニタニタと嫌らしい笑みを浮かべながら、サバイバルナイフを持った男は口を開く。
「やめないけど、どうする?」
そう言って刃渡り15センチ程のナイフを胸の当りまで持ち上げて見せた。
柊には、次の策がなかった。
えっと、どうしよう。
頭に浮かんだその言葉を口に出さないようにする事が、彼の次のせいいっぱいの一手だった。
次の瞬間、柊の右肩に稲妻が走った。
「あっ」
サバイバルナイフの先が、肩に3センチ程食い込んでいた。
走った稲妻は、激痛だった。
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