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敵は、ゴミを捨てるかのごとく自然な動きで、柊の右肩を刺したのだ。
「なあ、痛いだろ? ジジイ」
おそらく威嚇の一種ではあるだろうが、なんのちゅうちょもなく、肉の中に切っ先を埋めてくるとは。
そして29歳を捕まえてジジイとは!
血液がみるみる右腕からたれてくる。
ナイフが刺さった瞬間は痛いと感じたが、数秒経って右腕の感覚はあまりない。
つまり痛みは少ない。
……なんでこんな事をやれるんだこいつらは。
ジャイアンだってここまでやらないぞ。
いや、あれが育ったらこうなるのか?
すると……
「おいオッサン、怖くて固まってんのか? めんどくせえ、てめえも乗れ」
「グっ」
柊の後頭部に激痛が走る。
しびれを切らしたドライバーの男が降りてきて後ろから殴ったようだった。
腹部へのパンチで苦しんでいる卒業生と、後頭部への打撃で気を失いかけている中年。
2人はワゴン車の後部座席にゴミのように詰められた。
かすかな彼女の呻き後声が、車中のBGMとなっていた。
柊は薄れる意識の中、ペットの「あじさい」に餌をあげるのを
忘れていた事を思い出した。
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