第二話「君死にたもう事なかれ」

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敵は、ゴミを捨てるかのごとく自然な動きで、柊の右肩を刺したのだ。 「なあ、痛いだろ? ジジイ」 おそらく威嚇の一種ではあるだろうが、なんのちゅうちょもなく、肉の中に切っ先を埋めてくるとは。 そして29歳を捕まえてジジイとは! 血液がみるみる右腕からたれてくる。 ナイフが刺さった瞬間は痛いと感じたが、数秒経って右腕の感覚はあまりない。 つまり痛みは少ない。 ……なんでこんな事をやれるんだこいつらは。 ジャイアンだってここまでやらないぞ。 いや、あれが育ったらこうなるのか? すると…… 「おいオッサン、怖くて固まってんのか? めんどくせえ、てめえも乗れ」 「グっ」 柊の後頭部に激痛が走る。 しびれを切らしたドライバーの男が降りてきて後ろから殴ったようだった。 腹部へのパンチで苦しんでいる卒業生と、後頭部への打撃で気を失いかけている中年。 2人はワゴン車の後部座席にゴミのように詰められた。 かすかな彼女の呻き後声が、車中のBGMとなっていた。 柊は薄れる意識の中、ペットの「あじさい」に餌をあげるのを 忘れていた事を思い出した。
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