会いたい。でも、会いたくない。

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私と清盛は別れており、数ヶ月が経っている。それでも私たちは1週間か2週間に1回の頻度で会い続けている。夕方ごろに待ち合わせをして、居酒屋かバーに入って他愛ない話をしている。ほろ酔い気分になると、温もりが恋しくなるのか、そういう雰囲気に押し流されるのか、どちらかわからないが、遊びの延長線のように身体を重ねる。今日だってそうなろうとしている。 玄関先でキスをされた。唇が離れると清盛は薄く微笑んだ。アパートの扉を開けて中に入ったら、顎をクイっとあげられ、口に舌をねじ込まれた。タバコの匂いがした。 玄関の明かりが差し込む、薄暗い部屋のベッドで私たちは抱き合った。 別れて初めて会ったときは半分嬉しくて、半分苦しかった。私は清盛と前の関係に戻りたかったから。拒めばよかったのだ。会うことも、キスも、抱き合うことも。清盛の言葉通りに動いたら都合のいい人形になる未来は見えていた。見えていたけれど、会いたいという欲望を抑えつけることができなかった。 会う回数を重ねていくごとに、嬉しいや苦しいといった感情は徐々に消えていき、代わりにこのままでもいいか、という感情が芽生えた。
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