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向かい側に座る清盛は、足を組み、身体を横にし、つま先はそっぽを向いている。
テーブルに並ぶ、中途半端に残された料理。塩味の焼き鳥の盛り合わせに、卵焼き、冷やしトマト、ナスの煮浸し。そして清盛の緑茶ハイと私のトマトハイ。
普段ならお開きごろにはなくなっている料理が今日はずいぶんと残っている。焼き鳥と卵焼きに関しては食べごろを逃してしまっている。
清盛と付き合っていたころからよく足を運んでいる焼き鳥屋さん。夫婦で営んでいるらしい。旦那さんが厨房で焼き鳥やらを焼き、奥さんが数人の従業員を取り仕切りながら注文を受け、料理と酒を運んでいる。
やけにはっきりと他のお客の会話が耳に入る。野球の話とか、仕事の話とか、友人の悪口とか。
私はトマトハイをすこし呑み、清盛を見つめた。
清盛はテーブルの隅に置いていたタバコとライターを手にした。タバコを燻らせ、緑茶ハイを口に含んだ。緑茶ハイがあったところには、グラスの側面から滴り落ちた水滴のせいで丸い跡がついていた。ちらっと視線を向けてきた清盛と目があい、「なに?」と訊かれた。
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