さらば、夏休みのとも

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 家に帰ると、夏織は自分の部屋のカレンダーに、早速予定を書き込み始めます。  陽菜と約束したプール、お祭り、家族で出かける遊園地、花火大会、おばあちゃんち……。小さなマスに予定が並んでいるのを見ると、ますます興奮をかき立てられます。予定の入っていない日は何をしようかと考えるのも楽しくなるほどです。  ところが、ランドセルを開いた時、夏織の表情は曇りました。  学校の荷物をぎゅうぎゅうに詰め込んだランドセル。その一番上には、夏織の大嫌いな文字が顔を覗かせていました。  『夏休みのとも』です。    先生は「充実した夏休みを」と言うのに、こんなものがあったら充実なんかしないじゃない、夏織はそう思います。  そもそも、ようやく学校での勉強から解放されるのに、どうして学校以外の場所で勉強しなくちゃいけないのかしら。  『夏休みの』なんて、誰が付けた名前なんでしょう。センスがないどころか、嫌味じゃない。これがわざとひらがなで書かれているのは、きっと「(とも)」じゃなくて「(とも)」って意味だからなんだわ。
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