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でもすぐに、夏織の表情はけろっと元に戻りました。自由帳を取り出すと、それを机の上に広げます。『夏休みのとも』はランドセルに入れたまま。
夏織は一年生の時から、一度も『夏休みのとも』を提出したことがないのです。それでも怒られない裏技がありました。
先生に「提出してください」と言われたら、「やってきたけど、家に忘れました」と言うのです。そうすれば先生は、夏織が本当にやってきたのかそうでないのかを判断できません。次の日も、その次の日も同じことを言われますが、夏織はずっと「今日も忘れちゃいました」「明日持ってきます」とうやむやにし続けていました。
もちろん、やってなんかいないのです。今年も同じ手を使って、やらないつもりでいました。
こんなお勉強なんて、どうせ学校でやるんだからいいじゃない。それよりも私には、夏休みにやりたいことがいっぱいあるんだから!
夏織には、自由帳に描き進めている恋愛マンガがありました。休み時間のたびに描いていましたが、いよいよそれもクライマックスです。この夏休みの間に完結させるのです。
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