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そんな夏休みが4周目にもなったとき、さすがにおかしいと、夏織はようやく気が付きました。
夢で夏休みを経験していたと言うにしては、その回数が異常です。それに、自分以外の人の言葉や仕草、その日その時に起こる出来事のすべてが、何度繰り返してもまったく同じなのです。
どれが夢で現実なのかが分からなくなっていました。
いや……すべてが現実のようにも感じていました。
お祭りの屋台の食べ物はもう、食べる前から胃もたれを起こしているし、ウォータースライダーは滑りすぎて酔ってしまうし、おばあちゃんにこっそりお小遣いを貰った時には、「知ってる、千円でしょ」と思わず口走ってしまいました。
何より、書き続けている恋愛マンガのこと。いつになっても学級委員長と主人公がキスできないのです。自由帳もカレンダーと同じように、夏休みの初日に戻ると真っ白になってしまうのでした。
これにはとうとう夏織も参って、このループから抜け出したくなりました。
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