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僕の口唇がそう尋ねると、兄は靴を脱いで、奥の部屋にいる僕の所まで来た。そして僕の両頬を両手で押さえた。兄はその口唇を、乱暴に僕の口唇に押しつけた。いつも無精髭の兄のアゴは、バイトに行くためかすっかり剃られてツルツルだった。
このようなことは、このときが初めてではなかった。いつもはもっと優しくしてくれたし、受け入れることができた。でもこのときの僕の口唇は、兄を受け入れることができなかった。
だから僕の上下の唇の間を兄の舌がすり抜けて入ってくるのを感じると、僕はとっさに兄の体を押しのけて唇を離したのだった。
だから僕は尋ねた。
「ねえ、じゃあなんでさっき、舌、入れてきたの」
(続く)
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