(四)

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(四)

 兄は玄関の方へ行くと、ドアを開けた。朝なのに外は土砂降りの雨だった。  兄は靴を再び履くと、「じゃあ、俺、バイト行くから」とこちらを見た。 「ちょっと!」  そして兄は玄関脇に駆けてあるビニール傘を掴んで傘を広げると、部屋を出た。 「待ってよ! 人の話聞いてるの?」  僕はたまらず兄を追いかけた。靴を履いた。かかとを踏んだまま。玄関ドアを開けると、大きい雨粒が次々にかかってきた。  そして兄を追いかけた。  兄の歩速は速かった。すぐに追いつけなかった。 (続く)
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