(二)

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「あたしね、業平君のこと、好き」  その言葉を聞き、僕は海ちゃんの顔を再び見た。彼女は目を閉じたまま、わずかに口をすぼめていた。彼女の唇はピンクのラメ入りのリップクリームでかすかにぬめっており、そのしわまでキラキラときらめかせていた。間違いない。これはキスをせがまれている……。さっきまで食べていたチョコバナナクレープの味がまだ口に残っていた。僕とのキスがそんな味では、彼女は幻滅してしまうのではなかろうか、と焦った。 (続く)
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