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【1】
美永姫美、末代彩乃の二名が怜の元に弟子入りしてから一週間が過ぎた。
平日は、放課後廃校舎に集まり特訓。
休日は、夕方頃に廃校舎に集まり特訓。
特訓特訓特訓特訓特訓特訓特訓特訓の日々を過ごした訳だが……
「こんなもんかー!! 『人の役に立ちたいんだろー!?』『そんなんでボクの横に立てると思ってんのかー!?』『霊王倒すんだろー!!』立てー! 寝るなー! 膝に手を着くなー! 前を向けー!!」等など……普段の怜からは想像出来ないような怒号が、怜から発せられる。
あくまで、特訓時限定だが……それにより、怜は弟子二人から『鬼』『人の形をした悪魔』『ドS星人』『弟子を過労死させようとする死神』等と影で蔑称で呼ばれる事となる。
散々な言われようだった。が……
「彩乃! もっと『引き寄せ』の力を有効活用する意識を持って!!」
「はぁいっ!!」
「姫美! 拳銃を召喚する時は、しっかりと拳銃をイメージしろ!! 出来れば、『拳銃の悪霊』に似せた銃ではなく、自分だけの拳銃が良い!! 想像力を豊かに!!」
「はいっ!」
影で文句は言いつつも、二人は怜の事を信じており、精一杯特訓に励んでいた。
精一杯――真剣に……
「よし! 今日の特訓はこれでおしまい! お疲れ様ー!!」
怜がそう言うと、二人はへなへなへなーっと尻もちをつく。ヘトヘトだ。
二人して背中を合わせ、身体を預け合っている。
「鬼よぉ……あれは誰なのぉ……? とても怜っちとは思えないわぁ……」
「……そうね……あれはきっと、怜ではない何かよ……鬼が怜に取り憑いてるんだわ……退治しなきゃ……ははは」
あまりの疲労故にブツブツとおかしな事を言っている。
特に姫美がおかしい。
そんな二人へ、「これどーぞー」とスポーツ飲料のペットボトルを手渡す。
二人は「ありがとー」と、一目散にそれを受け取り、一気にゴクゴクト飲み干した。怜はそんな彼女達の様子を見つめ、にっこりと微笑んだ。
「二人共ー、かなり疲れてるんじゃないー? 大丈夫ー?」
「……平気よぉ……これで将来強くなれるんならぁ、ドンと来いだわぁ……」
「おー、凄いねー……流石は一番弟子ー」
怜に褒められた姉弟子に対して、「何よ……いい格好しちゃって……この牛女……」と嫉妬混じりに呟いた。
それが彩乃の耳に入る。
「何か言ったぁ? 金髪根性無しダメ妹さぁん?」
「何も言ってませんー! べーっだ!」と姫美は子供のように舌を出す。
怜はそんな二人のやり取りを見て、はははと笑った。
「元気だなぁー、二人共ー……こりゃボクの扱きが足りない証拠かなー? 次からはもっと……ん?」
途端に黙って、二人して抱き合い、ガクガクと身体を震わせ、『コイツマジか?』と言わんばかりの、恐怖のこもった目で怜を見つめて来た。
「本気ぃ……?」
「やっぱりアレは怜じゃない何かなんだわ……優しさの欠片もない……」
本気で怖がっている。怜は苦笑いをして、「冗談だよー」と言う。
「むしろ明日はー、特訓お休みにしてお出掛けするつもりだったからー」
この言葉を聞いた二人は怜に詰め寄った。
「「どっちと!?」」
「えー……いやー……三人で、だけどー?」
「「っちぃっ」」と舌打ちをして睨み合う弟子二人。
本当で特訓足りてないのかなーと怜が思う程には、殺気に満ちていた。
「でも、お出掛けって何するの?」と、姫美が素朴な疑問を述べる。
「お買い物だよー」
「お買い物ぉ? 何でぇ?」彩乃が不思議そうな表情を浮かべる。
怜は答えた。
「『霊王』討伐遠征は、泊まり込みになるだろうからー、その準備をねー……一人でショッピングモール行くよりー、皆で息抜きがてら行くのも楽しいかなーって思ってさー……どうかなー?」
「「行く!!」」
弟子二人は即答だった。
目をキラキラと輝かせている。
「よし、決まりだねー……じゃあどうするー? 何時に何処集合に……」
「ちょっと待って怜、一つ聞いていい?」姫美が挙手して質問する。
「どうぞー」
「霊王討伐『遠征』って事は……何処かへ行くんだよね? 何処に行くの? また県外?」
「ううんー、違うよー今回はね――」
そして怜はその答えを述べる――
「海外だよー」
二人の弟子は目を剥き、「「海外っ!?」」と、またしても仲良くハモったのであった。
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