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【4】
沈黙が続く。
そんな中、彩乃がポツリと呟いた。
「怜っちやぁ、冥さんみたいな人達ばかりじゃぁ……ないのねぇ……」
「まぁねー……考え方は人それぞれだからー」と、怜が返事をする。
「……あの二人とはぁ、仲が悪いのぉ……?」
彩乃は、ちょっと踏み込んだ話をする。
あの二人――墓守見舞と、鬼森田命吉。
二人と怜の関係性は……?
見るからに険悪そうな雰囲気だったが……
怜は答える――
「……ううんー……普段はめっちゃ仲良いよー……あの人達は見ての通り年上の先輩でー、ボクがゴーストバスターの世界に入った時からー……凄くお世話になった人達だからー……」
「ふぅん……じゃぁ、何であんな険悪なムードだったのぉ……?」
「それはー……」怜は横目でチラッと姫美を見た後、渋々と答える。
「ボクとー……あの二人でー……意見が違う事があってさー……そこから何て言うか……そのー……」
「気不味くなったとかぁ?」
「うん! そーそー! 気不味くなったのー!」
「ふぅん……」と、彩乃が考え込むように返事をする。と……
ここで、姫美が重い口を開いた。
「……ねぇ怜……あの人達が――
私を処分しようとしてる人なの……?」
「は? 処分ってぇあんたをぉ?」彩乃が驚き声を放つ。それを耳にしつつ、怜は淡々と姫美の疑問に答えを返した……
「そうだよー……」と。
「そっか……」姫美は頷く。そして俯きながら……答えの分かった疑問を口にする……
「もしかして、あの人達も……『霊王討伐遠征』に来るの……?」
「うんー、別行動だと思うけどねー」
「やっぱり……どっちが『霊王』を早く倒すか、賭け……みたいな事をしてるんだね……」
「……うんー……ごめんねー……姫美の命をー……物みたいに扱っちゃってー……」
「ううん良いの……」と、首を横に振る姫美。
そして言った――
「私――強くなりたい!」
姫美は強く――そう言った。
「強くなって――怜に守られてばっかりの私を……早く卒業したいっ! ひ弱な私を卒業したいっ! 意味のある弟子になりたいっ!!」
彼女は手を強く握り締めており……その掌からは、爪がくい込み、血が流れていた。そして……
「私が弱いと、怜まで馬鹿にされるっ! そんなのヤダもん!! 怜が……怜がどんな気持ちで、私を生き返らせてくれたのか……あの人達は、知ってるの……? 悔しいよ……」
その目には、涙が浮かんでいた。
その様子を見た彩乃は、溜め息を軽く吐き「……まったくぅ……何があったのかぁ、詳しくは分かんないけどぉ……」そう言いながら、ポケットの中からハンカチを取り出し、姫美に手渡した。
「え……あんた……」
「あんたがぁ、そんなメソメソしてるとぉ……何かイロノまでぇ、暗い気分になんのよぉ……それにぃ――弟子がか弱いって言われるのはぁ……そのぉ……イロノの責任もある訳だからぁ……そのぉ…………
一緒に強くなりましょぉ……姉妹でぇ……だからぁ……泣いてる場合じゃないでしょぉ?」
と、彩乃が励ますと、尚更姫美の目から涙が溢れて来る。
受け取ったハンカチで涙を拭き取りつつ、姫美は……
「うん……ありがとぅ……牛女……」
と、お礼を述べた。
「こういう時でもぉ、蔑称で呼ぶのねぇ……フフ、あなたらしぃわぁ……」
「だって……牛女だもん……」
「フフ、こいつめぇ」
そんな風に仲良くじゃれ合う、弟子二人の光景を見た怜は言った。
「今の二人ならー、大丈夫そうだね……――」
「えぇ?」「……何が?」と、二人の弟子は怜の顔を見る。
怜は言う――
「そろそろーボクもー……二人を『霊王討伐遠征』に連れて行っても大丈夫かー、テストみたいな事をしたかったんだよねー」
「テスト……?」彩乃が呟いた。
「うん、テストー……ゴーストバスター弟子入りの際にはー最後にテストをしなくちゃいけないんだー……それをクリアするとー、晴れてーボクの本物の弟子となる訳なんだけどー……どうするー? 強くなるにはー、実戦が一番なんだけどー……
そのテストー、受けるー?」
二人は即答した――
「「はい! 今からでも!!」」
「分かったー。あ、でもー、流石に今日は無理だからー」苦笑いの怜……その代わりに、怜は拳を突き上げる。
「今日は思う存分ー! 遊んじゃおー!!」
「えぇー……」「怜……?」その怜の提案に、ポカンとする彩乃と姫美……
怜はにっこり笑う。「大丈夫だよー」
「休みも特訓の一貫だよー、こういう時こそーしっかりと休んでー気分転換しなきゃー……だから遊んじゃおー!」
その怜の言葉に、二人は納得したのか顔を見合せ微笑み合った後……「「おおー!!」」と片手を掲げたのであった。
その後三人は、買い物を再開し……その後、ボーリング場でボーリングをして、カラオケ店で歌を唄い、最後は、美味しいと評判のオムライス店で仲良くオムライスを食べて……解散となった。
怜が「明日の準備があるからー」っと、一人そそくさと帰って行った為、弟子二人――
彩乃と姫美が並んで帰っている。
「んあぁー……楽しかったわぁー!」と、彩乃が伸びをしながら言う。満足そうな表情だ。
「そうね……」姫美も笑っていた。
「てゆぅかあんたぁ、歌めちゃくちゃ上手いわねぇ……ボーリングは死ぬ程下手だったけどぉ……」
「歌上手いのだけ褒めれば良いのに、何で余計な事まで言うのよ……この牛女は」
「あはは、やっとぉ、普段のあんたに戻って来たわねぇ、安心したわぁ」
「ぶぅ……」
「ふふふ、テストぉ……頑張ろぅねぇー、妹弟子ちゃん」と彩乃は握り拳を掲げた。
「……うん……頑張ろ……姉弟子」姫美はそう言いつつ、同じく握り拳を出し――彩乃の拳と合わせた。
グータッチをした。
彩乃と姫美は、この日――ほんの少しだけ……仲良くなれたのだった。
ほんの……ほんの少しだけだが。
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