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【1】
『六強会議』翌日――
怜は、自らが住んでいる山奥の廃校舎へ……美永姫美を呼び出した。
呼び出した……の、だが……
「あれ……? いない」
姫美が保健室の扉を開けるも、その男の姿は無かった。
「約束の時間より早く来ちゃったからかな?」と思いつつ、保健室の中へ入り、ベッドの上にぽふっと座った。
約束の時間は18:00。現時刻は17:45――
ベッドに座り、スマホを弄りつつ時が過ぎるのを待つ。
まだかな、まだかなーっと……
時計の針が18:15を過ぎても現れないので、姫美も流石にイライラしてくる。「遅くない?」イライラして貧乏揺すりが止まらない。
遂に時刻は18:30を超えた。
「あー、もー!」待ち疲れて、姫美はベッドの上にダイブした。
「遅い遅い遅い遅いー!! 何やってんのよ怜はー!」と、ベッド上で手足をバタバタさせている。子供みたいだった。
「もう良い! 寝るっ!」と、掛け布団を被り、枕に頭を乗せそんな事を言い出した。
目を閉じる。
「早く来ないと本当に寝るんだからね!」
チッチッチ……時は過ぎる。
「ほ、本当に寝るんだからね!」
チッチッチ……更に時が過ぎる。
「早く来なさいよ! もうっ!」
チッチッチッ……更に時が過ぎ……
「すぅすぅ……むにゃっ、怜のにおぃ……すぅすぅ」
寝た。
美永姫美は、怜のベッドで爆睡した。
怜の匂いを目一杯、堪能していた。
変態だった。
そして更に時が過ぎ――
20:00――保健室の扉が開いた。
「すぅすぅ……」と可愛い寝息を立て、爆睡する姫美に近付く、一つの影……
その人物は近付く。
姫美を起こさないよう、電気は付けず、足音を消し、忍び寄る。
ベッドの上で寝息を立てている姫美の姿を確認。
目を見開く、その人影。
「ま、まさか……」と、その人影はスマートフォンを取り出し、素早い手付きで画面をスルスル動かし、シャッター音が小さいと評判のカメラアプリをダウンロード。
そして、カシャッと一枚撮影。
姫美の……まるで――
天使の様な寝顔を、そのスマホに、形として残したのである。
「か……かか、可愛い……」ちゃんと撮れているかを確認する為、スマホを弄るが、見事に撮影出来ていた。
天使の寝顔が天使の様にカメラに写っていた。
「これは待ち受けだねー……」その男は、待ち受け画像にセット。
デレデレと笑うその男。
遂にその男は、姫美本体へと手を掛ける。
先ずは頬っぺたを人差し指でツンツンツンツン。
「おっわ! すっげぇー……ぷにぷにだぁー……肌も綺麗だなー……」
次は彼女の髪に手を掛ける。
「うっわ! エグいくらいサラサラだー……! あわわわ……手入れ大変だろうなー……」
そして、鼻をくんくんさせ、匂いを楽しむ。
「い……い、いっ、におぉぉーーーーい!!」
余りに良い匂い過ぎて大声を出してしまった。
「むにゃっ……? だぁれ……?」と、姫美が目を覚ます。
その人物の姿を、姫美が確認。
「あ……おはよぅ……」と、目を擦りながら姫美が身体を起こす。寝ていた途中に、衣類は所々はだけ、妖艶な雰囲気を醸し出していた。
というか……ブラがちょっと見えていた、黒だ。
「ふわぁ……ん? 外が暗ーい……まだ朝早いのぉ……?」まだ寝惚けているのか、ふわふわとした言葉を話す姫美。
「てゆーか……えっ? ここ何処? 私の家……じゃないよね……?」
徐々に頭が冴えてくる姫美。
そして、その男が……変態の限りをつくしていた男が、説明をしてあげる。
「ここ……
保健室だよー? 因みにそこは、ボクのベッドー」
「へ!?」姫美は、周囲を見渡す、どう考えても保健室だった。
「え? え? え? え?」顔を真っ赤にする姫美。自らの少しはだけた衣服を見て「きゃあっ」とすぐ様掛け布団で覆い隠す。
「ちょ、ちょっと怜! じーっと、何で起こさないのよ! バカっ! アホっ! 変態っ!!」
頭は冴え切ったようで、その男の名前を呼び、罵倒し始める。
その男――怜は返答する。
「何でってー……良く寝てたからー、起こさないようにと思ってー……」
「お、こ、し、な、さいよっ!! バカっ!!」
「てゆーかー……他人のベッドで寝るのもどうなのー?」
「うぅっ……」何も言い返せない姫美だった。
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