第七話『二人の弟子』

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【1】 『六強会議』翌日――  怜は、自らが住んでいる山奥の廃校舎へ……美永姫美を呼び出した。  呼び出した……の、だが…… 「あれ……? いない」  姫美が保健室の扉を開けるも、その男の姿は無かった。 「約束の時間より早く来ちゃったからかな?」と思いつつ、保健室の中へ入り、ベッドの上にぽふっと座った。  約束の時間は18:00。現時刻は17:45――  ベッドに座り、スマホを弄りつつ時が過ぎるのを待つ。  まだかな、まだかなーっと……  時計の針が18:15を過ぎても現れないので、姫美も流石にイライラしてくる。「遅くない?」イライラして貧乏揺すりが止まらない。  遂に時刻は18:30を超えた。 「あー、もー!」待ち疲れて、姫美はベッドの上にダイブした。 「遅い遅い遅い遅いー!! 何やってんのよ怜はー!」と、ベッド上で手足をバタバタさせている。子供みたいだった。 「もう良い! 寝るっ!」と、掛け布団を被り、枕に頭を乗せそんな事を言い出した。  目を閉じる。 「早く来ないと本当に寝るんだからね!」  チッチッチ……時は過ぎる。 「ほ、本当に寝るんだからね!」  チッチッチ……更に時が過ぎる。 「早く来なさいよ! もうっ!」  チッチッチッ……更に時が過ぎ…… 「すぅすぅ……むにゃっ、怜のにおぃ……すぅすぅ」  寝た。  美永姫美は、怜のベッドで爆睡した。  怜の匂いを目一杯、堪能していた。  変態だった。  そして更に時が過ぎ――  20:00――保健室の扉が開いた。 「すぅすぅ……」と可愛い寝息を立て、爆睡する姫美に近付く、一つの影……  その人物は近付く。  姫美を起こさないよう、電気は付けず、足音を消し、忍び寄る。  ベッドの上で寝息を立てている姫美の姿を確認。  目を見開く、その人影。 「ま、まさか……」と、その人影はスマートフォンを取り出し、素早い手付きで画面をスルスル動かし、シャッター音が小さいと評判のカメラアプリをダウンロード。  そして、カシャッと一枚撮影。  姫美の……まるで――  天使の様な寝顔を、そのスマホに、形として残したのである。 「か……かか、可愛い……」ちゃんと撮れているかを確認する為、スマホを弄るが、見事に撮影出来ていた。  天使の寝顔が天使の様にカメラに写っていた。 「これは待ち受けだねー……」その男は、待ち受け画像にセット。  デレデレと笑うその男。  遂にその男は、姫美本体へと手を掛ける。  先ずは頬っぺたを人差し指でツンツンツンツン。 「おっわ! すっげぇー……ぷにぷにだぁー……肌も綺麗だなー……」  次は彼女の髪に手を掛ける。 「うっわ! エグいくらいサラサラだー……! あわわわ……手入れ大変だろうなー……」  そして、鼻をくんくんさせ、匂いを楽しむ。 「い……い、いっ、におぉぉーーーーい!!」  余りに良い匂い過ぎて大声を出してしまった。 「むにゃっ……? だぁれ……?」と、姫美が目を覚ます。  その人物の姿を、姫美が確認。 「あ……おはよぅ……」と、目を擦りながら姫美が身体を起こす。寝ていた途中に、衣類は所々はだけ、妖艶な雰囲気を醸し出していた。  というか……ブラがちょっと見えていた、黒だ。 「ふわぁ……ん? 外が暗ーい……まだ朝早いのぉ……?」まだ寝惚けているのか、ふわふわとした言葉を話す姫美。 「てゆーか……えっ? ここ何処? 私の家……じゃないよね……?」  徐々に頭が冴えてくる姫美。  そして、その男が……変態の限りをつくしていた男が、説明をしてあげる。 「ここ……  保健室だよー? 因みにそこは、ボクのベッドー」 「へ!?」姫美は、周囲を見渡す、どう考えても保健室だった。 「え? え? え? え?」顔を真っ赤にする姫美。自らの少しはだけた衣服を見て「きゃあっ」とすぐ様掛け布団で覆い隠す。 「ちょ、ちょっと怜! じーっと、何で起こさないのよ! バカっ! アホっ! 変態っ!!」  頭は冴え切ったようで、その男の名前を呼び、罵倒し始める。  その男――怜は返答する。 「何でってー……良く寝てたからー、起こさないようにと思ってー……」 「お、こ、し、な、さいよっ!! バカっ!!」 「てゆーかー……他人のベッドで寝るのもどうなのー?」 「うぅっ……」何も言い返せない姫美だった。
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