夏の終わり

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「昔は植物が枯れるのは冬だったんだって」  彼女が唐突に言う。私たちは同じクラスで同じ授業を受けていて、その話は今日の授業で習ったことだから二人とも知っている。いや、習ったというと少しずれる。先生が雑談のように話していたことだから。だからこそその理由を知らない、先生がそれを言う前に授業が終わってしまったから。  だから私たちは知らない、植物がどうして冬に枯れていたのか。冬は過ごしやすくて植物が一番元気な時期なのに。 「じゃあ、それはなんででしょうか?」 「それ答え知ってるの?」 「知らないよ、知らないから考えてみたくて」  彼女の発想は私にはなかったものだ。多分そういうところがあるからこそ私と話したいと思うのだろう。だから私はわからないなんて言わない。 「じゃあ今とは呼び方が逆で暑いのが冬だった」 「そんな変わり方するのかなあ、けどそれだったら面白いよね」 「冬が来るたびにに除草剤まいてたとか」 「でもそれだと夏も枯れてるんじゃない」 「じゃあ今より気温が低かったとかでも」 「そういえば氷河期って言葉聞いたことある」 「こおり……外に氷があるなんて信じられないけど例えばそのくらい寒かったら植物って枯れちゃうのかな」 「そんなの見たことないからわからないね」  そうかもしれないの推論で私たちは多分これで一旦結論にしてみる。  面白いなと笑う彼女の笑顔が眩しくて日陰を作る木を見上げる。 「あっ、あの枝、芽がちょっと緑になってる」 「ほんとだ」 「じゃあもう夏も終わるね」
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