情報を追い求めて

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ふと、違和感があってゆっくり目を開いた。初めは暗がりで見えなかったが、よく見てみると俺を抱えて寝るリヒトが居た。 あれから彼はそのまま横になっていたし、そこら中に汚れを作ってしまったので休息出来るスペースを作るのに大変だった。 何とか場所を作ってから俺もそのまますぐに寝ちゃったんだろうなと納得した。 それはともかく動けないしどうしようかな、と思っていたタイミングで彼が目覚めて視線が絡んだ。 「…あ、…体、大丈夫……?」 俺のせいだけど、やや反応が遅れた所で彼は何度か瞬いた。そうしてやった事を思い出したのか、少し固まっていた。 そうなるよな、と苦笑いをして彼を抱き寄せてから腕の力を込めた。 「無理させたよな、もうちょっと寝よう。起きてからまた考えればいいよ」 そう伝えると彼は無言ではあったが、抱き締める力を込めて俺に応えた。 自然と目が覚めたので体を伸ばそうとすると、上手く動かない事に気付いてから思い出した。 「…お、はよう……?」 こちらをじっと見ているリヒトと目が合う。いつもの彼に戻った反面、目が据わっているような 「―――迷惑を、掛けた……」 開口一番に彼はそう言った。迷惑?と返せば、彼は険しい表情になった。 「山林へ行っただろう…あの場所は、俺の種族だと立ち入りが厳しい……」 そうだ、一見リヒトは人間に見えるけど種族でいえば厳密には人間ではなく亜人にあたる。 しかし人間と亜人は近しい見た目に出来る設定もあったので、結構安易に種族を決めてしまったような気がする。 それにしてもまさかこんな所でそれが響くとは思わず、罪な事をしてしまったと一人気まずくなった。 「亜人に対する催淫作用のある場所、だったようだ……今は問題ない…」 「そ、そうなんだ、治って良かったね…」 対処法が合っていたかは分かりかねるが、彼が元通りになったのなら失敗ではなかったのだろう 今更どうしたら正解だったのか、と聞くのも内容が刺激的なために聞くのもはばかられる。 「水飲んでくる」 彼を抱き締めていた手を解き、上体を起こして立ち上がった。 なんとなくあの場から離れる理由を作りたかっただけだ (……この関係性って何だろう) 前回は契約で今回は“一応”治療、ということにはなるのだろうか いずれ、うやむやではいかなくなる。そう理解は出来ているけれど はぁ、とため息をついた。この状況を、リヒトはどう思っているんだろうか わざわざ聞くのもなんだかおかしいし、時間が解決するものなのかな 「ボス……?」 なかなか戻らない俺を気にしてか、こちらを覗くリヒトが居た。いつの間にか彼はいつもの格好に着替えていた。 「…もう出る?次の場所、確認しなくちゃな」 ぐいっとすぐに水を飲み干し、脱ぎ散らかしてしまった服に着替えた。 シュン、と地図が現れてチカチカと点滅している場所が2つあった。 リヒトが体調を崩した山林は彼によってバツを付けられていた。 そういえばと布に包んで持っていた骨を覗いてみた。 「これは何かの役に立つのかなぁ」 「反応していたのは首輪ではなく、この骨だったのも……」 うーん、と表示してくれている地図を見て俺は唸った。 「現時点での正確な地図と方位磁針はやっぱり欲しいかも。この地図からも行けなくはないけど、どうにもざっくりしてて」 それにまたこのような事があっては身体的にも精神的にも俺の身が持たない。なのでごめん、とリヒトに頭を垂れた。 「今までも食費や衣服を出してもらってたけど、この2つだけは特に欲しい!お金…貸してもらえると、助かります……!」 ちゃんと依頼達成したら返すから、と付け加えた。雰囲気からして微動だにしない彼の様子に若干の不安を覚える。 「…ボスは、損な性格してる……」 やや顔を上げてちらっと窺えば、ほんの僅かに笑っているようなやや呆れているような表情が見られた。 「そ、損って…でもお金無いのは事実だし……」 親友とも言い切れず、知り合いではあるかもしれないが赤の他人とも言えぬこの間柄をどう説明するのか それに明確な関係でないまま2度に渡って身体を重ねてしまっている。 「それくらい何も問題ない……次の目的地に向かいながら店に行こう…」 「…そう、なのかな」 リヒトは、気にならないのだろうか。俺が彼を創造した主だとしても、こんな関係をさらっと受け入れられるものなのか はっきり言えば異端だろう。元の世界から概念が反映されていないはずもない やはりまだ、どう捉えていいものか分からない。確実なのは彼に対する好感はある、ということか (あまりにも自然に受け入れ過ぎている気がするし、リヒトが言ってたバグってヤツにも関係あったりして…) それでも今を大事に生きていきたいという気持ちはあるし、なるようにしかならないのかもと無理矢理に自分を納得させた。
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