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奇妙な首輪とエルフ
倒れてピクリとも動かない大蛇を改めて近くで見ると本当に大きかった。2mちょっとか、いやこれは3mくらいはありそうだ
下手したらそのまま丸呑みされていてもおかしくなかったなと身震いした。
リヒトは膝をついて大蛇に手をかざせば、みるみるうちに消滅していった。それを追うように黒い蛇も砂のように散ってしまった。
(消えた…)
ゲームならよくある現象ではあるものの、実際目にすると消滅したものはどこへ行くのか気になった。
「……どうした…?」
「何でもないよ、興味深いな〜って思っただけ」
引き続きざりざりと砂の上を歩いていると、緑のある場所がちらほらと見えてきた。
「反応があるのはあの辺りかな。あ、エネミー情報もある…幽霊だって」
「…幽霊……あれか」
リヒトが視線を向ける方角を見てみると、うっすらと砂に影が現れたかと思えば布のような何かがウロウロしていた。
「ああいう幽霊系苦手なんだよな、突然現れる上に消えるから倒しづらいし」
とにかく陰湿だと伝えると、リヒトはそうなのかと呟いた。
「行こう、無駄な戦闘は避けたいし」
そう呼び掛けると、彼は軽く頷き俺の後ろをついてきた。
反応が強い場所まで来てみると、そこには枯れ木があった。よく見てみると枝に何か引っ掛かっている物があった。
「あれって…首輪?」
「……検索しよう」
空中に画面のようなものが現れ、検索を掛け始めた。
調べなくても首輪であることは明白だったが、以前注意を受けたので俺はそのまま眺めていた。
どうやら首輪である事には間違いないようだったが、チェック項目っぽい所にバツが1つ付いた。
「何これ?」
「……首輪…ではあるようだが、これは…」
どう見ても首輪なのにと不思議に思っていると、不意に後ろから声が掛かる。
「俺達の縄張りに入って来たのは……お前らか?」
リヒトはすぐさま俺を背にし、振り返るとそこには黒い衣服を身に纏った2人のエルフが立っていた。
どちらも似た身なりをしていたが、声を掛けてきた方は左目を髪で隠していて気が強そうな印象だ
(……縄張り…)
ゲームではドゥマール砂丘に行く機会は多々あったものの、特別長居する必要性なんてなかったような
依頼目的や素材収集という目的なら有り得るが、厄介なこの場所を所有地だと宣言する意味とは一体何なのか
「……それは知らなかった。すぐに出て行こう…」
「もしかしてその首輪の持ち主か?」
引っ掛かっている首輪を見て、もう1人の男がそう尋ねて来た。そちらは右目に眼帯のような物を付けていた。
「その首輪、呪われているから取り扱いに困ってたんだ。キミ達が持って行ってくれると助かるよ」
「呪われているって…どういう事ですか?」
この首輪になんだか困っているような様子だった。もしかしたら何か解決出来るかもしれない
「対エルフの罠があってどうしようも出来ないんだ。見るところキミ達、エルフじゃないだろう?」
「……断る、それが事実である証拠を見せてみろ…」
静かだが強めな声色でリヒトがそう答えると、はぁあと気の強そうな片目のエルフはわざとらしく大きなため息をついた。
「ま、そりゃそうだよな。そっちの人間はバカ正直に信じるマヌケみたいだけど」
わざわざ俺を煽るようにして言われた。ムッとなったが、俺以上にリヒトから異常な殺気を感じた。
「…次に愚弄したら殺す……」
「おい、煽ってどうするんだ。オレ達じゃ本当に解決出来ないから頼むって話だっただろ」
眼帯のエルフはそれをたしなめていた。こんなんでキレるなよ、とあくまで反省する気はなさそうだった。
「不快な思いをさせた、しかしオレ達がその首輪に困っているのは事実だ」
対エルフの首輪、と俺は頭の中で繰り返した。山林にあった亜人に対する催淫作用のある場所も思い浮かぶ
こんな物もそんな場所も、俺が知っている限りトリスピには存在しなかったはず
俺がプレイ出来なかった時期に実装されたとして、一体何の為に?このゲームにおいて催淫作用のある場所なんて意味があるのか
「…協力したいのは山々だけど……」
俺がそう答えると、いいからさっさと持ってけよと言いながら片目のエルフがシッシと手で払うような動作をする。
「しなくていい…」
リヒトが俺にそう告げると、今度は眼帯のエルフが軽いため息をついた。
「それを持って行くのなら見逃そうと思っていたが……仕方ない」
(この人達は自分達が嫌がる程の首輪があるのに、どうして此処を縄張りにしたんだ?この砂丘には何かあるのかも…)
そう考えていると、リヒトが即座に俺を腕に抱え飛び移りながら何かを避けていた。
すぐには理解出来ず何事かと思えば、彼を追うようにして足元から鋭い鎖が空へ昇っていた。
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