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実際、転移した先ですぐに謎の物体に襲われた時は完全に獲物だと思われたのだろう
身動きが取れないよう全身を拘束し、麻痺するような何かが体を巡って不自然な睡魔も感じた。
彼に助けてもらえなかったらそのまま餌食になっていたかもしれない、そう思うと背筋が凍る。
だから、ここでリヒトと契約を結ぶのはありがたい申し出なのかもしれない
「分かった、具体的にはどんな契約?」
「…想像している通り、ボスはあまりに非力……」
グサリと胸に何か刺さった気がするが、間違ってはいない
「…生存率を上げたいのなら契約はしておいた方がいい、と考える…」
それなら言うまでもなく、契約した方がいいだろう。現状、身を守る手段などないのだから
契約をお願いしたいと告げると、リヒトは提案したにも関わらず視線を下に向けてしまった。
「ん?…どうした?」
「…この契約は、2通りの方法がある…1つ目は俺から求める、2つ目はボスから……」
求めるって?2つ目は俺から?と考えた所で彼が急に落ち着かなくなった理由が何となく分かった。
「……もしかして…触れ合い、的な?」
そう聞いてみるとリヒトが不機嫌さを隠さない表情で俺を見てきた。その反応、なんかおかしくないか
「…これは、冗談ではなく…護ると言う事は―――」
分かった分かった、と静止するように手を出した。彼が照れ隠ししているようには見えないが、詳しく聞いた所で理屈など分からない
「リヒトがそう言うならそうなんだろ?まだ死にたくないし、契約して少しでも生存率が高まるなら…恥ずかしいかもしれないけど構わないよ」
未だに不機嫌さを隠さないリヒトだったが、1つため息をついたところで彼は腕を組んだ
「…どちらも、ボスを護る事に変わりない……ただ、効果的なのは後者だ…」
護る対象を識る事が重要、と彼は続けた。そこにどういう違いがあるのかは正直理解出来ていない
けれども俺から何かをすることで効力が高まるならそちらを選ぶしかない
「それで、俺はどうしたらいい?」
いわゆるスキンシップということなのだろうが、程度というものがあるだろう
正直リヒトは俺が作ったキャラクターであり、愛着は十分にある方だ
「……率直に伝える、ボス…俺を抱け」
目が点になった。どうもこれは言葉のあやではなく、本当にリヒトを…… 俺が?
「…俺が……!?…ん!?え、というか…他にこう……うん…!?」
今更だけど彼に守ってもらう=彼を抱くことに繋がるのはなぜなんだ!?
この世界ではたくさんの不思議な魔術があるのは知っているけど、こんなのは知らない
「ボス、俺は……本気だ…」
契約を交わす前に用意があるから待っているようにと告げられ、初めに寝ていた部屋へ戻った。
どうしよう、という想いが頭を駆け巡る。男性と性行為などしたことがない
それにこれはあくまで契約、俺を守ってもらう為のものであり愛かと問われると絶対に違う
それが正しいのかどうなのかも分からない、初対面ではない…のかもしれないが出会ってそんなに経ってもいない
(だとしても、リヒトは俺を)
身を挺してまで契約を優先し、護るということを第一に考えてくれた。その気持ちを無下にしたくはない
正直緊張する。彼と一体どこまでするのだろうか、当たり前だが落ち着かない
そうこうしているうちにリヒトが部屋に入って来た。
「大丈夫?何か…した方がいい事とか」
「…無用、始めるぞ……」
ベッドの近くまで移動し、薄着になるように言われた。そして隣では彼も脱ぎ始めたところでついガン見してしまった。
細身なのは知っていたというか、設定した張本人だけどスゴい身体をしていると思った。胸筋や腹筋も理想的な筋肉というのか
「……ボス…」
あんまりにまじまじと見過ぎていたのか、リヒトが眉をひそめていた。
呼ばれて気が付いた。通常は隠れている耳や首も、些細な所なのにこんな凛々しいものだとは
「リヒトって、格好良いな…!」
「…ボス、契約を……」
「ご、ごめん…じゃあお願いします…」
ベッドの横で向かい合う形になり、お互いの両手に指を絡めた。ちょっとリヒトの方が手も指も大きいなと感じる。
「…目を閉じろ、俺が…口付したら開けていい」
言われるままに目を閉じると、日本語ではない言葉で彼は詠唱を始めた。
よく聞いても何語を喋っているのか分からない、そういえばなぜ俺は彼と会話が出来ているのだろう
もしかしたらゲームでの使用言語が反映されているのだろうか、どちらにせよ会話する上で不自由がないのは助かるけど
そう考えているうちに唇から感覚が生まれた。優しく、だがしっかりとキスをされた。
「…ボス……」
呼ばれて目を開けた。顔が近い、リヒトって格好良いんだなと再度認識する。
そのまま2人でベッドに移り、もう一度唇を重ねられた。
(何だろう……まだ緊張もするけど、安心感がある…)
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