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情報を追い求めて
リヒトはすぐに部屋を出て行ってしまったが、俺は今になってなぜ一緒に寝ようなんて提案したんだろうと思った。
俺とリヒトの寝る場所を交代したら良かっただけだし、1日くらいならソファーで寝るくらいどうってことない
契約したから出来るだけ近くに居たほうが良いとかあったのかな?でもそんな事は一切言われていない
彼が大事だと考えている節は俺にもある。そもそも助けてくれたから恩だってある。
(……さすがにあんな事するとは思わなかったけど)
思い出して顔が熱くなる。ほとんど俺は動いていないし、リヒトは契約の為にやってくれただけだが
というか契約って言ってたけどそれも本当だろうか、確認する方法がないから彼を信じるしかないけど
(あの時のリヒトは嫌がってなかったからって…判断するしかないな)
そもそも提案してくれたのはリヒトだ、それなら素直に受け止めて俺は俺なりに彼の足を引っ張らないようにするだけだ
さて、今はそれを考えるのはやめて準備しよう。ペチペチと顔を軽く叩き、昨日加護を宿してくれた服に着替えた。
リビングへ行くとリヒトが居た。俺に気付き、テーブルに置いてあった物を手渡して来た。
「…これを」
それを受け取って見てみると短剣だった。握ってみると手に馴染む、鞘を取ってみたら刃が見えた。
万が一の時にと彼に告げられ、それを腰のベルトに括り付けられた。
「護身用って事か」
使う機会がなければいいなと思うけど、そう都合良くはいかないんだろうな。彼に出るぞ、と声を掛けられ俺は頷いた。
「おぉおおお〜〜…」
外に出た瞬間、大きめの声が出たし今になって思い出した。トリスピはキャラクターだけではなく、あらゆるものをカスタマイズ出来る。
俺はホームを大木の上に作ったんだった。増築もしたので土台になってる木も育てた覚えがあるなぁと思い出す。
「自分で作ったのに忘れてた……現実の物として見るとスゴいな…」
柵からそっと下を見ると思った以上に高くて後ずさった。これをハシゴだけで上り下りしてたのだから信じられない
ゲーム内だとある程度の高さであれば余裕で着地するし、場合によってはワープも出来てしまう
周りにはこの家一つ分ぐらい低めな木々が生い茂っていたが、想像以上の規模だったのもあってべーライズが一瞬頭から吹っ飛んだ。
「……行こう…」
突然リヒトの肩に担がれ、困惑している間にハシゴも使わずに下りた。
「うおぁあああ〜〜!!?」
心の準備も出来なかったまま地面が近付いて行く、その寸前で俺は目を強く閉じた。
問題なく着地したようですぐに肩から下ろされたが、足が竦んだのもあって一人で立つのは難しかった。
それに枯れそうになるくらい叫んだせいで喉がめちゃくちゃ乾いてる。
「あ、のさぁ……いきなりは、酷いって…」
「…!怪我でもしたか……?」
キッと睨んで頭をぺしーんと叩いた。何だ?みたいな顔された。
「俺はリヒトみたいに強い体してないの!こんなアホみたいな高さで命綱もなしに落ちたらフツー死ぬからな!?」
色々な所から色々なものが出そうになったじゃん!とやや涙目で訴えた。
「…そう、か……なるほど…」
とか言いつつ分からない感覚だ、とでも言いたげなのがちょっと腹が立つ
そのまま真っ直ぐ歩いていると、あっという間に森を抜けて丘に出た。そこから目的地でもある街が見えてきた。
(あれが、べーライズ…!)
到着するのにはまだ距離があるけど、ゲームではかなり通った街である。今は画面越しではなく現実として、綺麗な街並みも港から船が出るのでさえもはっきり見える。
「……進むぞ…」
分かった、と彼の後ろをついて行った。周りを見回しながら街道を歩いて行く
走り抜ける小動物や飛び立つ鳥を見ながらふと思い出す。
(遊ぶ前にこっち来ちゃったし、アップデートで行ったことのない所とか増えてるだろうな…)
最新の地図とか方位磁針も欲しくなるなぁと考えた所で俺には金が無いんだったと思い出した。
どこかでお金を稼ぐ手段も考えなければならない、街に着いたら集会所も寄っておきたいところだ
べーライズの入口にある大きめなゲートを通ると、ゲームで味わった臨場感そのままで圧倒された。
「…ボス」
くいっとリヒトに腕を引かれ、ご飯と呟かれた。そういえば朝は何も食べてなかったな
「……何が食べたい?」
「リヒトの好きな物でいいよ」
そもそも彼の好みって何だろう。ゲームだと好き嫌い以前にこの料理を食べさせて回復するっていう類の機能しかなかった。
「…パスタは…」
「いいね、じゃあそこに行こう」
彼と共に食事が出来ること自体が本来有り得ないのだし、もっと色々な事を知れたらいいなぁと思う
店に入りテーブル席に案内された。メニューを取り出し、何がいいかなと考え込む
(…食べた事あるようなパスタもあるし、元の世界との乖離もそんなになさそうだな)
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