前世の知識でお弁当屋を開きましたが、仕事仲間の第二王子から溺愛されるなんて聞いてません

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 何が何だか分からずパニックになって泣き喚いたけれど、それが、前世のわたしだと気づいたとき、わたしは決めたのだ。  前世の知識を活かそう!  貧乏な我が家を、我が領地をなんとか盛り立てよう! ……と。  ラッキーなことに我が伯爵領の特産品は『米』。  わたしはお弁当を領地の名物にしようと決意して、なんやかんやしている内に――気づけばイケメンの貴族令息から婚約を申し込まれることもなく、19歳になっていた。  明日はわたしの20歳の誕生日。  そして、お弁当屋の開店日なのだ。 「アドリエンヌ。明日が開店日だというのに、まだ寝ていないのかい?」  部屋から明かりが漏れていることに気づいたお父様が、扉の外から声をかけてくれた。 「お父様、お気遣いありがとうございます。もう明かりを消しますわ」  貴族令嬢としての婚期を逃した今、結婚は諦めた。 「わたしにできることは前世の知識でチート人生よ……ふふ……ふふふふふ……!」 §  いよいよ、ついに!  お弁当屋がオープンする。  店名は『ホカベン』。場所は、領地でいちばん景色のいい湖畔にした。  湖は、向こうが見えないくらいの大きな湖は立派な水源でもある。  三角巾に割烹着で、わたしは気合を入れる。これがわたしの戦闘着だ。 「よしっ」
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