前世の知識でお弁当屋を開きましたが、仕事仲間の第二王子から溺愛されるなんて聞いてません

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 令嬢らしからぬ気合を入れてしまったけれど、仕方ない。だってわたしの前世はワーカホリックな日本人。  まずは領地内でお弁当文化を広めて、ゆくゆくは、領地外からの観光客を見込んでいる。  伯爵令嬢自ら手売りする謎の食事ことお弁当のラインナップは、3つに絞った。  まずは『ノリベン』。  ほかほかの白いご飯の上にはつやつやとした海苔。その間には、しょうゆおかかが隠れている。  具材はちくわの磯辺揚げと白身魚のフライ、それから甘辛いきんぴらごぼう。  柴漬けもちょこんと添える。  ふたつめは『シャケベン』。  これは白いご飯じゃなくて、お揚げさんとにんじんの炊き込みご飯にした。  焼き鮭の切り身に海老フライ。きんぴらごぼうと柴漬けは『ノリベン』とお揃いだ。  みっつめはスペシャルメニュー『カラアゲベン』。  たっぷりのから揚げが堂々たるメイン。  ほかほか白いご飯には梅干し。もちろん、きんぴらごぼうと柴漬けも添える。  ……いや、自分でも感心する。よくこれだけ日本のお弁当を再現できたものだと。  それは5歳から現在に至るまでの血のにじむような努力の賜物といえる。偉いぞ、わたし。  貧乏貧乏と言っているものの、なんだかんだ、領主の力もすごい。ありがとう、お父様。  だからこそわたしはこのお弁当プロジェクトを成功に導かねばならないのである!  厨房から美味しい香りが漂ってきた。
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