前世の知識でお弁当屋を開きましたが、仕事仲間の第二王子から溺愛されるなんて聞いてません

8/18
前へ
/18ページ
次へ
「美味すぎる! どうして今まで知らなかったのか後悔するレベルだ!」  分かります、殿下。から揚げって美味しいですよね……。  しかも殿下は20代前半。から揚げを一番美味しく食べられるお年頃のはず。  そしてあっという間にみっつのお弁当は空になった。 「どれもいい味わいだった」  わぁっ、と歓声が上がる。中には泣いている従業員さんもいる。  かくいうわたしもなんだか泣きそうだ。 「これは繁盛するだろうな」 「ありがとうございます!!」  感謝の声を上げたのはお父様だ。 「さぁ、開店の準備をしよう。今日も行列ができている」  殿下の視線に気づいて外を見ると、昨日より行列が長くなっている。  これは……気合を入れなければ……! §  殿下はわたしたちがびっくりするくらいよく働かれた。  陣頭指揮を取ってくれて、てきぱきとさばいていくその様はとても鮮やか。  そしてお弁当は、初日よりも早い時間に完売してしまった。 「皆、ご苦労だった。ゆっくり休むといい」  ぐったりとした空気のなか、殿下だけが疲れひとつ見せずに立っている。  汗ひとつかいておらず、涼しい顔をしている。  わたしなんてなけなしの化粧が全部落ちてしまったというのに。ちょっとうらやましい。  皆が割烹着を脱ぎはじめるなか、殿下がキッチンへ足を踏み入れた。 「どうなさいましたか?」
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加