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悪魔の館、と怖れられる廃屋に忍び込んだ。外見とは裏腹に、豪奢な内装と美男美女の召使い達が住んでいた。主人が長らく不在なので滞在して欲しいという。美味い食事と酒、そして俺の寵を求める召使い達。
なんだ天国じゃないか。どうりで先月ここに来たはずの友人も帰ってこないわけだ。
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「この迷い家は、報われぬ魂達の棲家。迷い込んだ現世の者を歓待し、誼を結び、連れ帰って貰うのです」
「それがこのイケメン屋敷の正体…!」
「客人が男性なら、美少女屋敷になります」
「老人だったら?」
「その方次第ですが、猫屋敷になる事もあります」
「(マッチョ屋敷もありそう)」
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「お嬢様、昨年から続いていた当家の不幸、全てとある令嬢の呪いによるものです」
「呪いですって?」
「はい。下位貴族がお嬢様を妬んで」
「なんてこと。その者、必ず生きて捕えなさい!」
「嬉しそうですね?」
「だって本当に呪いが効くのなら、消して欲しい政敵などいくらでもいるわ!」
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「聖女さま、お願いします」
呪われた者を私が撫でると相手の不調が消える。代わりに私の髪は黒く染まる。長く長く伸ばしながら、邪悪な力を髪に溜め込む。
この『封じ髪』を切るのは魔王が倒された時。幼馴染の勇者の旅が終わる時。
ああでも、結える長さは残したい。花嫁衣装に合うように。
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この鈴は母の形見だ。中に何も入っていないから鳴らないはずの。
けれど時折、ちりんちりんと綺麗な音を立てる。それは決まって、不吉な場所を通る時や不審な人が近づいて来た時だ。
そして今日、父の再婚相手に会う。
連れ子として義理の兄になる人に頭を下げると、鈴がちりんと音を立てた。
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兄は幽霊になってしまった。直接姿を見ることは出来ないが、鏡やガラス窓にはその姿が映るのだ。
学生時代は私の寂しさもそれで慰められたが、家を出ても付いて来て構われたがる。
やる事がなくて寂しいらしいので吸血鬼を紹介した。鏡の中から仕草を真似っこする仕事だ。
楽しそうで何より。
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大臣は元徴税官だ。民から金を搾り取るほど出世したと言われている。
「税が重すぎて結婚出来ない者が増えています。子が出来ねば国が立ち行きません」
「ふむ。子のない者が死んだら財産はどこへゆく?」
「それは……国庫へ……」
「そういう事だ」
俺は絶対に国を出る。そう決意した瞬間だった。
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ゲームの世界に転生してしまった。毎日いろんなタイプのイケメンが私の気を惹こうと接触してくる。
「なあ、暇なら少し遊ばないか?」
「眠いのか?よかったら俺の膝使えよ」
「……(無言で頭を撫でてくる)」
「僕の家に来る?」
ちなみにこの世界の私は猫であり、私が彼らの攻略対象である。
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人を化かす術は二つある。
こちらが想像した姿を見せる術と、相手が想像した姿を見せる術。
楽なのは後者だ。怯える者は勝手に化物を見、求める者がいれば焦がれた相手の姿を見る。しかし。
「人に出会したら疾く逃げよ」
ある男に出会ってから、猫耳巨乳メイドから戻れなくなった母はしつこく繰り返す。
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昔々、ある母親が赤子を泉に投げ込んだ。
「貴女が落としたのは男児ですか、それとも女児ですか」
「男児です‼︎」
跡継ぎを求められ苦しんでいた母親は躊躇うことなく男児を連れ帰った。
残った赤子は女神から大切に大切に育てられた。
今日はめでたい代替わりの日。
泉に花が咲き乱れる。
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