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飼い猫が玄関を出てしまった。慌てて近所を探すも見つからず、神社で願掛けをしていると縁の下から飼い猫が。喜んで連れ帰ると、玄関前にもそっくりな猫が。更には動物病院から連絡があり、同じ猫が。
「もしかすると兄弟猫かも」
保護猫時代を知る先生が言う。
「君達の作戦かな?」
「にゃ」
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「次は早押しクイズです。『コスパ』とはなんの略でしょう?」
「コスプレパンデミック!」
「コストカットパーティー!」
「コスメとパフューム!」
「コスい事するパパ!」
「小杉のパラサイト生活!」
「略して『コスパ』になるのでどれも正解ですね」
「投げ出さないで司会者」
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異世界に召喚された。
曰く、世界の王が不在のため、地方の魔力が枯渇しどんどん住める場所がなくなっていると。言われるままに丸い水晶に手を置いて祈れば、光る蝶が無数に現れ羽ばたいていった。
「あの蝶が魔力を運び、各地を潤します」
めっちゃ感謝されてるが、どう見てもここ魔王城なんだよな……
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お空の向こうに何があると思う?
水だよ。
大地の上に空気の層があって、水を押し返してるんだ。
でもお空には穴が開いてるから、そこから少しずつ水が入ってきて、それが溜まると雲になる。
更に溜まると雨になる。
お空の穴は夜になるとよく見えるよ。
いつか、あの穴を覗いてみたいんだ。
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昨今は『仮想空間のお屋敷で働く』というコンテンツが人気でメイドやコックや庭師等に扮して豪華なVR屋敷に住まうサービスがある。
だが主人役の態度が度を越すと一気に和が崩れるのが悩みの種。
雇われ主を置く館、AIを置く館など試行錯誤の末――猫を主人に据えるのが、最適解となりつつある。
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俺はVR屋敷の雇われ主人。ここのメイドや執事は有名配信者ばかり。
実は以前の主人役がトラブルを起こし首になったそうで、ほぼ無名の俺なら扱いやすいと選ばれた。しかし気後れする。
「主様には自信が足りぬ」
「皆で褒めましょう」
後にこの優しい屋敷についたアダ名は『保育園』。ごめん。
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彼は独身だと言っていたが、本当は結婚していた。
「でも信じて欲しい。本当に愛してるのは君の方だから」
その言葉を支えに、独断で奥さんに会いに行く。
「私、あの人の恋人です」
経緯を話すと、奥さんは天を仰いだ。
「やめときな、あんな奴」
不実な相手に縋りつくなと。大人の口調だった。
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異世界に魂だけ召喚され、人形に宿った。
彼らの話では恐ろしい流行り病で人々がばたばたと倒れているそうだ。なら現代知識の出番だな!
しかし人形には口がない。文字も不明。俺なりに頑張って手洗いやマスクを伝えた。絵とジェスチャーで。
病の流行が終わると、これがゲームとして流行った。
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「わしは氏神。お前の母親は、病床についた時からずっと息子のお前を心配して、祈りを捧げておってな。お前が幸せであるようにとあまりに頼むから、直に参った」
「母さん…!」
「あとの請願は全部姑と旦那への呪いじゃったが、さてどうしたものか、一応お前に相談を」
「母さん…!!」
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「我々の聖女さまは植物の加護をお持ちです。その癒しの力で人々の怪我や病気を治すので、国民から大変に慕われております」
「ほう。しかしそのような存在、貴族どもが黙っておるまい」
「一方、麻痺、かぶれ、幻覚作用のある神経毒や致死毒も操れます」
「一気にヤバくなってきたな?」
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