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-41-  わしら兄弟は、親父に言われて森へ薪を取りに行った。そして斧が手からすっぽ抜けて泉に落ちた。すると女神が出てきてこう言ったんだ。 「お前が落としたのは世界を創る斧か、それとも滅ぼす斧か」  と。もちろん親父の斧だと答えた。  ……あの日から世界はふたつに分かたれた。わしと弟の国に。 -42-  学校にある『あかずの扉』を面白半分にこじ開けたら、そこは迷宮屋敷に繋がっていた。  獣人の部屋、巨大厨房、吹き抜けの温室、小人の市場……回廊があるかと思えば部屋から部屋への扉でまた移動。  まてよ、俺どうやってここまで来たっけ?  とても元の部屋へ戻れる気がしないのだが……。 -43-  過干渉な実家を出るべく、寮制の王立魔法学院に入学した。  しかし両親は「警護は1-2人では足りないな」「生活の世話と、折角なので情報収集もさせたいですね」と私に従者を6人もつけた。  女子3人に男子3人。  私がここから自由になる作戦……こいつら全員カップルにして、私どころじゃなくしてやる! -44-  昨年から体調が悪い。なぜか眠れぬ夜が続き、頻繁に胸が苦しくなる。  これはもしや呪いでは? とふと思い至った。  ちょうど騒音で隣人と揉めた時期からだ。  誰がお前なんぞに呪われてやるものか!  跳ね返すつもりで気合いを入れるとなんだか体が楽になった。  一方その頃、姑が倒れたと連絡が入った。 -45-  お金の価値が暴落した。代わりに『徳』マネーが生まれた。  良いことをすると、擬似マネーが『お徳』カードにチャージされ、店で使えるのだ。  始まりは美男美女のいる店で、お金を使わずに接待を受けられるため大変に流行った。  積んだ徳を払うため、死後の世界では地獄行きだとの噂もあるが。 -46-  どうやら好きだった学園アニメの世界に転生してしまったようだ。  ドキドキしながら入学したが、何かがおかしい。AとBは確かに親友だが距離が近すぎるし、Cはなんだか性格が違うし、あまり接点がないハズのDとEがべったりだ。なのに既視感がある。  まさかここ……二次創作の方の世界か!? -47-  泥の中から見上げた月は明るかった。  その時はなんとも思わなかった。  しかし戦から帰り、英雄として貴族の屋敷に招かれ贅沢な衣装や料理の並ぶ中にいると、時折叫び出しそうになる。  散っていった戦友たちの顔も名前も知らずに笑う奴ら。  窓の外の月を見て正気を保つ。  俺はまだ泥の中にいる。 -48-  彼がその正体を表したのは、私が食事に薬を盛られて身動き取れなくなってからだった。 「乙女の生き血など、久しぶりだ」  吸血鬼なんて、本当にいたのか。首筋に牙を立てられ、啜られる。だがじきに彼は苦しみ出した。 「私は昔、人魚の肉を食ってしまってな。…たくさんの毒を煽り続けたよ」 -49- 「彼と別れたって本当!?」 「…うん」 「あんなに仲良かったのに! 彼の絵を応援したいって言ってたじゃない!」 「うん。…でも、気づいちゃって」 「何に?」 「私が好きなのは彼の絵で、彼自身じゃなかったんだって。才能と人格は別なんだなって」 -50- 「『治癒の聖女』が『魔女』に格下げされて追放されたと聞いたが本当か」 「大分尾鰭がついてますが、先日の魔物討伐で『使えない』と判断されたのは本当です」 「何があった」 「怪我を見るのが耐えられないらしく。魔物の傷まで癒やしちゃうんです、無意識に。もう戦闘が泥沼」 「悲惨」
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