愛おしい日々。

1/6
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ

愛おしい日々。

最初はまさか自分が男を好きになるなんて、思いもしていなかった。 「煜太さん!おかえり!」 「ああ、ただいま。メシ作っててくれたのか?」 「まあね。今日は俺、定時で帰れたからさ」 交番勤務を務め始め九年目。さすがに業務には慣れたと言えども、疲れは溜まる。 しかし、恋人の笑顔で出迎えられればそんなのは突風の如く、吹き飛んでしまうものだ。 水希 煜太は九歳年下の雫井 湊の頭を撫でながらニヤける頬を最大限に引き締めている。 1LDKのリビングに立ち込めるのは、和食の匂い。 煜太は湊の腰を抱いたまま、玄関から続く扉を開け右手にあるキッチンへと進んだ。 「やっぱり、今日は肉じゃがだったな」 「うん、正解!煜太さん好きだって言ってたよね?」 見ればフライパンにぎっしりと詰まった肉、じゃがいも、人参、玉葱がグツグツと音を立てている。 フライパンでも肉じゃがが作れると聞いた時は、正直未知な領域すぎて目から鱗状態だったが、その光景にも慣れてくればそれが日常となる。 煮えた音を立てるフライパンの横にはお鍋。ということは味噌汁か。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!