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愛おしい日々。
最初はまさか自分が男を好きになるなんて、思いもしていなかった。
「煜太さん!おかえり!」
「ああ、ただいま。メシ作っててくれたのか?」
「まあね。今日は俺、定時で帰れたからさ」
交番勤務を務め始め九年目。さすがに業務には慣れたと言えども、疲れは溜まる。
しかし、恋人の笑顔で出迎えられればそんなのは突風の如く、吹き飛んでしまうものだ。
水希 煜太は九歳年下の雫井 湊の頭を撫でながらニヤける頬を最大限に引き締めている。
1LDKのリビングに立ち込めるのは、和食の匂い。
煜太は湊の腰を抱いたまま、玄関から続く扉を開け右手にあるキッチンへと進んだ。
「やっぱり、今日は肉じゃがだったな」
「うん、正解!煜太さん好きだって言ってたよね?」
見ればフライパンにぎっしりと詰まった肉、じゃがいも、人参、玉葱がグツグツと音を立てている。
フライパンでも肉じゃがが作れると聞いた時は、正直未知な領域すぎて目から鱗状態だったが、その光景にも慣れてくればそれが日常となる。
煮えた音を立てるフライパンの横にはお鍋。ということは味噌汁か。
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