試練の日々。

11/12
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
結果、最悪だったと煜太は自宅のソファで項垂れていた。 「ほんっとに煜太さん、大人気ないよ」 「はい、その通りです。湊さんの言う通りです」 珍しく、というより湊と出会って初めての形勢逆転。けれど、今はそれが当然というように、煜太は湊の話に聞き入っている。 「あのさ、確かについてくればとは言ったよ?けど、マジでついてくるなんて普通思う?」 いや、そうだよな。ごもっとも。 「…そんなに俺が心配だった?そりゃあ、煜太さんと比べればめちゃくちゃガキっぽいし、高校生に見えなくもないけど」 「いや、そうじゃない!俺が心配だって意味はそうじゃなくて」 ああ、駄目だ。この流れはまた湊に入らぬ誤解を生ませるだけだ、と煜太は悟る。 湊は高飛車な猫に見えて実のところ、中身はうさぎのように弱い。 自分にとことん自信がないからか、口癖はいつも「俺なんて」だ。 しかし、実際はその真逆でだからこそ、煜太は心配で堪らない。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!