コンラッドは月夜に踊る

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コンラッドは月夜に踊る

『ふはははははははは!随分と遅かったなあ、グレンライダー!』  テレビ画面の中、小柄な怪人が笑っている。多分、カマキリか何かを模した姿なのだろう。全身が緑色で、背中には大きな羽根?卵?みたいなよくわからないものをしょっている。人間の腕とカマキリの腕、両方がにゅうっと体から伸びていてうねうねと動くのがなんとも不気味だ。  そういえば、昆虫が大好きすぎる男が昆虫になりたいと願っていたら、いつの間にか怪人になってしまった姿――だとかなんとか、説明されていたような気がする。なるほど、昆虫だとしたら足は六本ないとおかしい。人間本来の四本の手足に加えてカマキリの両腕がついているのは、それはそれで正解なのかもしれなかった。   『き、貴様……!』  そんな怪人に相対するのは、ヒーローのグレンライダー。臙脂色のマントを来たロボチックな姿のヒーローは、怪人の姿を見てわなわなと全身を震わせている。 『なんてことを……!一体何人を肉団子にして喰らったのだ!?』 「……えぐくね?」  見ていた高校生の僕は、思わずつっこみをいれていた。緑色の怪人の体は、確かにあっちこっち血飛沫っぽいものが散っている。しかも、彼の後ろには、ピンク色の大きな肉の塊みたいなのがごろごろしているという状態。あれはなんだろうと思っていたら、まさか人間をコネコネして作った肉団子だというのか。  つまり、大量の死体の山、というわけで。 「原型留めなければ死体がエグくないなんてことないんだぞ?というか、日アサの子供が見ている番組でよくぞここまでやったなっつーか……お子様のトラウマになるんじゃないのというか」 「いけえええええ!グレンライダー!怪人をやっつけろ、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 「……あ、そう、平気なのね……」  ドン引きしているのは僕だけだったらしい。隣で小学生の弟は拳を突き上げて歓声を上げている。最近のお子様は、肉団子にされた人間くらいでは怖くもなんともないらしい。  僕の様子に気付いた弟は、不満げに唇を尖らせて言ったのだった。 「なんだよ兄貴!兄貴もグレンライダー応援してくれよ!大丈夫、いつものパターンなら、肉団子にされた人もグレンライダーのヘルプ光線でちゃんと元に戻るから!」 「戻るの!?」 「食われた人は戻らないかもしれないけど!」 「駄目じゃん!」  やばい、ツッコミが追い付かない。最近の特撮ってみんなこうなんだろうか。僕は呆れつつも、結局弟と一緒に最後まで番組を見てしまったのだった。
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