コンラッドは月夜に踊る

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 つまり。呪われた呪われた空き地の人形、という七不思議が都合が良いと思った人間がいるということ。  そもそも、あの空き地は大変不便な場所にあるし、袋小路なので人が通りがかるようなところでもない。売り手がつかないのは納得、と誰もが思っていたような場所。ただでさえ人が通らないようなところに、“見るだけで呪われる”系の怪談があったらどうなるか?当然、余計人は寄り付かなくなることだろう。  つまり、何かを隠すにはもってこい、ということだ。 ――そして、カマキリ怪人。……当然だけど、カマキリ怪人が登場したのはグレンライダーが始まってからだ。初期からチラ見していたのを含めても、まだ登場してから一年も過ぎてねえ。昔ながらの呪われた空き地の番人、にするにしては新しすぎる存在だ。  でもって、当然実在する怪人でもない。誰かがカマキリ怪人のコスプレをして空き地で何かをしていた、と考える方が正しい。弟はそれを、空き地で踊っていると解釈したようだが――ざくざくという音からしても、実際は何かを掘っていた、あるいは埋めていた可能性が高いのではなかろうか。  何故カマキリ怪人のコスプレをしたか?理由は恐らく二つ。  一つは、万が一見られても、怪人の姿のインパクトが強くてそれ以外が印象に残らないだろうということ。  もう一つはカマキリ怪人の姿。――カマキリ怪人は、登場する時基本血まみれだ。つまり、多少汚れていてもおかしいと思われないということ。なんなら、返り血を浴びていたってわかりっこない。つまり、殺人の隠蔽をするのに、もってこいの姿ということではないだろうか? ――あくまでこのへんは、推測でしかない。何もないってなら、それでもいいんだ。でも……。  弟の不安を払拭するためにも。それから、犯人が“弟の姿を見て狙ってくるかもしれない”という、僕自身の恐怖を拭い去るためにも。空き地に何があるのか、確かめるべきだと思ったのである。  僕は空き地の前に立ち、そして気づいてしまうことになる。背の高い雑草が、明らかに踏み荒らされた後があるということを。 「……っ」  そして僕は勇気を振り絞り、空き地に足を踏み入れることにしたのだった。
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