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旅の目的地の1つである神殿は、この広い平原を北西に抜けた先の、更に山脈を越えたら、一番高く聳える山があり。その山の中腹にあるらしい。
まぁ、進めばわかるってことで。ひたすら仲間と歩いてる。
平原と言っても、所々が沼になっていて避けながら…迂回しながら進んで行く。
あ、風…
頭上に風を感じたら、翼龍が飛んで来る合図。
一番 俊敏なシアンが弓を引いた。矢が左翼の下を掠めたのを確認し、素早く次の矢を弓に充てがい、レイピアを抜いた。
大剣を構えてるガランスが、シアンの少し前へ出た。
2人は私が加わる前から旅をしていて、戦闘も強いけど 他の知識も豊富で頼り甲斐がある。
私は、自分に合う武器をまだわかってないの。面白い武器を見つけたら何でも使ってみたくなる。今のお気に入りは鞭。――ということで、私も肩慣らしと行きますか!
「さぁー、調教してあげるから いらっしゃ〜い♪」
鞭って、振るたびにシュンッとキレの良い音が鳴ってパシッと物を弾いて、なんか気分上がるんだよね。ふふ〜ん♪
あ、シアンの目が何か言ってる。
「シアン、よそ見する余裕あるの?」
「うん?鞭で岩を砕いた音で逃げてったし。」
「あー、旋回して戻って来ないかなぁ。」
左手を敬礼するみたいにひさしにして見上げた空は 淡い青で、高くから照らす太陽の光が眩しい。
シアンは空を見ないで答えた。
「来ないと思うよ。モンスターにも食べてもらえないんじゃ、嫁に行き遅れて三十路確定だな。」
はぁ!? 本っ当、ムカつく!
「おい、シアン。からかい過ぎだ。」
ガランス…口数は少ないけど、優しいし。
「ありがとう、ガランス。」
「ああ。誕生日は、俺たちが祝ってやるから安心しろ。」
優しい…そしてニコっと笑う顔も格好良い…のに、なんだろう、引っ掛かったのは。
シアンは…肩を揺らして笑ってる?
「シアン?」
「あははっ。俺たちと誕生日を祝うって、行き遅れて三十路を迎える確定って意味じゃねぇか。だあっははっ。」
――! ガランスがイケメンなのに彼女がいないのは、こういう所なんだよ。
もう…。放っておいて進まなくちゃ。
はぁ〜、どっかの酒場とかで新しい仲間を探そうかな。
女の子グループ…は、女の子はイケメンとの出会い目的で断わられたっけ。
旅を始める時のことを 思い出しちゃった。
男性陣も…結局、私より可愛い子や色気ある人を選んでたっけ。…どいつも こいつも。本気のメンバーは強さを求めるから、未経験者の私は壁の花…いや、壁の雑草?
そうだ。あの時、声をかけてくれたのがシアンとガランスだったんだ。
「俺たちは強いから守ってやるよ。な?ガランス。」
「ああ。少しずつ成長すればいい。」
そう言ってこの2人が連れ出してくれたんだった。
「シアン。ガランス。ありがとうね。」
「……え、それって、嫁ぐ時に両親に言うやつ?今までお世話になりました、みたいな。まだ諦めてなかったの?」
「そうなのか。アシエの精神は鋼鉄のようだな。」
「ぅぐっ…。」
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