顔しか勝たん☆

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わぁ、(せま)い。小さな(つくえ)が1つ。机の奥側に女性がいる。 「こんにちは。遠慮(えんりょ)しないで、椅子(いす)に どうぞ。」 「し、失礼します。」 笑ってもないのに、暖かいような優しい空気を(かも)し出す人だなぁ。 「字は書けますか?」 「はい。」 「では、この紙に。まず、ここに名前を。次にここに…最後に……それでは、見せてください。」 ―――ふぅ。久しぶりにペンを使った。 「顔…ですか。ステータスの変更ですね。 どこかを()ばすには、他から補填(ほてん)されるのです。しかし、どのように変化するかは わかりません。顔が良くなっても、体型が(みにく)くなることもあり得ます。それでも願いますか?…今のままでも充分(じゅうぶん)だと思いますよ?」 「綺麗(きれい)な人に言われても…。」 「ふふ、化粧(けしょう)()けるんですよ。神殿まで来る努力に比べたら、化粧の腕を上げる努力なんて簡単でしょうね。 少し考えてみて。今なら変更も取り消しも可能ですから。」 頭を冷やせ、と? 部屋の外には少年が待っていて、休憩所に案内されるのかな。 いや、このために来たんだから。もう決まってる。 気合いを入れて両手を机についたら、思いの(ほか)バンッと大きな音が鳴った。 「ごめんなさい!…あのぅ、やっぱり、私が求める強さは顔です。誰にも負けないくらい、可愛く可憐(かれん)(うつく)しい顔になりたい。誰もが振り返り見惚(みと)れるくらいの。もう、顔しか勝たん!くらいの美女になりたいんです。」 私の目を見つめていた女性は、長い睫毛(まつげ)の瞳を()せた。 「はぁ…。後悔(こうかい)しませんか?」 「うん………後悔は やってみないとわかりません。」 「…わかりました。では、こちらへ。」 机の裏側にも部屋があったんだ。そこそこ広い空間(くうかん)…あ、こっちが本当の部屋なのか。 八面の壁に難解(なんかい)模様(もよう)()られてる。色の違う石を嵌め込んでるみたい。綺麗というより少し気味が悪い。 「もう少し、中央へ。」 え?…あ、床にも模様がびっしり…。この辺り? 「本当に、よろしいですか?」 「はい。」 「静かに深呼吸をして、心の深くまで意識を集中して(いの)ってください。あなたが望むことを強く思い(えが)きながら。」 顔しか勝たん、顔しか勝たん。体型(たいけい)はこのままでもいいから、無敵(むてき)美貌(びぼう)を。 「終わりました。ご気分はいかがですか?体調が悪くなったりしていませんか?」 んー、変化を感じない。 「大丈夫みたいです。 ありがとうございました。」
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