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わぁ、狭い。小さな机が1つ。机の奥側に女性がいる。
「こんにちは。遠慮しないで、椅子に どうぞ。」
「し、失礼します。」
笑ってもないのに、暖かいような優しい空気を醸し出す人だなぁ。
「字は書けますか?」
「はい。」
「では、この紙に。まず、ここに名前を。次にここに…最後に……それでは、見せてください。」
―――ふぅ。久しぶりにペンを使った。
「顔…ですか。ステータスの変更ですね。
どこかを伸ばすには、他から補填されるのです。しかし、どのように変化するかは わかりません。顔が良くなっても、体型が醜くなることもあり得ます。それでも願いますか?…今のままでも充分だと思いますよ?」
「綺麗な人に言われても…。」
「ふふ、化粧で化けるんですよ。神殿まで来る努力に比べたら、化粧の腕を上げる努力なんて簡単でしょうね。
少し考えてみて。今なら変更も取り消しも可能ですから。」
頭を冷やせ、と?
部屋の外には少年が待っていて、休憩所に案内されるのかな。
いや、このために来たんだから。もう決まってる。
気合いを入れて両手を机についたら、思いの外バンッと大きな音が鳴った。
「ごめんなさい!…あのぅ、やっぱり、私が求める強さは顔です。誰にも負けないくらい、可愛く可憐で美しい顔になりたい。誰もが振り返り見惚れるくらいの。もう、顔しか勝たん!くらいの美女になりたいんです。」
私の目を見つめていた女性は、長い睫毛の瞳を伏せた。
「はぁ…。後悔しませんか?」
「うん………後悔は やってみないとわかりません。」
「…わかりました。では、こちらへ。」
机の裏側にも部屋があったんだ。そこそこ広い空間…あ、こっちが本当の部屋なのか。
八面の壁に難解な模様が彫られてる。色の違う石を嵌め込んでるみたい。綺麗というより少し気味が悪い。
「もう少し、中央へ。」
え?…あ、床にも模様がびっしり…。この辺り?
「本当に、よろしいですか?」
「はい。」
「静かに深呼吸をして、心の深くまで意識を集中して祈ってください。あなたが望むことを強く思い描きながら。」
顔しか勝たん、顔しか勝たん。体型はこのままでもいいから、無敵の美貌を。
「終わりました。ご気分はいかがですか?体調が悪くなったりしていませんか?」
んー、変化を感じない。
「大丈夫みたいです。
ありがとうございました。」
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