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百合は鞄から先ほどもらった名刺を取り出して神楽へ見せた。
神楽はその名刺を見て、固まった。
堂本黎。大学の同窓だった。堂本コーポレーションの御曹司だ。神楽の頭に黎の端正な顔立ちがすぐに思い浮かんだ。
彼は学業においても非常に優秀で、卒業時に学部生代表として答辞を読んだ。確か、お父上が社長でそのまま会社へ入社したはず。
名刺にもう一度目をやると、東京営業本部とある。やはり、東京勤務だ。なぜ、ロンドンにいたのだろう。
神楽も黎と同じ経営学部だった。ただ、神楽は吹奏楽の経験者で音楽関係のプロダクションへの入社を希望していた。いずれ、独立したいという野望もあり、経営を学んでいたのだ。
今は、希望通りクラシック関係のプロダクションへ入社して彼女のマネージャーをしている。
百合は逸材だ。彼女を育てることを社長から厳命されている。
それだけではない。神楽は彼女に惹かれていた。百合は美人だ。そして鷹揚で少し世間知らずなところもあり、ウブだ。
そういう彼女を好きになってしまったが、仕事だから神楽は自分の気持ちに鍵をかけている。
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