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名刺を見たまま固まっている自分を不思議そうに百合が見つめている。
確かに黎は、音楽が大好きだった。自分では演奏はしないが、クラシックが好きらしい。
母親がクラシック好きで小さいときから家で曲が流されていたと昔言っていた。妙に曲名や演奏者に詳しい。
ピアノなどを習いたかったが、父親がそういうものではなく、英会話や水泳など英才教育ばかりを習わせたらしい。
そういう話を聞きながら一緒にコンサートへ行ったことも一度ある。
とはいえ、神楽は奨学金を利用して大学に進んでいた。相手は御曹司。神楽にとって、まぶしい存在であり、妬ましさも少なからずあった。
彼の周りには同じ御曹司の友がいて、幼稚舎からずっと一緒の幼馴染みもいたようだ。執事らしき人物を見たこともある。
住む世界が違うとその頃から距離を取った。
女性にも非常にモテた。周りを多くの女性達が囲んでいた。彼は、美男であったので、それもあってのことだったろう。
神楽は百合をじっと見つめた。まさか……いや、そんなことはないだろう。
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