友人として

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 「栗原さんの楽屋はそこ?」  「ああ」  「君がマネージャーとは驚いたよ」  「それを言うなら僕だって驚いたよ。名刺に君の名前を見て……」  「偶然ロンドンに来ていたんだ」  「そうか……いつ帰るんだ?」  「明日の便だ」  「そうだったのか。一緒に食事くらいしたかったが、残念だ。明日はこちらもまた演奏会なので準備がある」  「そうらしいな。明日までなんだろ?」  「ああ」  そう言うと、神楽は自分の名刺を一枚黎に渡した。  「電話番号は後ろにプライベートを書いておいた。ウチのプロダクションのコンサートなら融通できるから事前に聞いてくれ」  「ありがとう。そうさせてもらうよ。栗原さんは今いいかな?」  神楽はドアをノックする。  「はい」  「百合、堂本君が来たけど、大丈夫?」  「ええ。入って頂いて大丈夫です」  神楽は黎に場所を譲った。一緒に入りたかったが、そうさせない雰囲気を黎が醸し出している。    「失礼します」  そう言って、仕立てのいい三つ揃いのスーツに身を包んだ黎が入っていった。
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