新たな事業

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 「ああ、元気そうだったよ。やはり、東京より自然が多いし、人に揉まれた生活から離れたからそれが良かったんだろう。今度の休みにでも一緒に行くか?」  柿崎はじっと考えていたが、静かに答えた。  「奥様のためには、黎様が元気でいること、お仕事を私が微力ながらお手伝いすること、そのことが一番です。もちろん、一度機会があれば伺いたいとは思っています。奈津も一緒にご挨拶したいので……」  結婚したことをきちんと伝えたいと前々から言っていたからそのことだろう。  母もきっと喜ぶ。奈津のことも可愛がっていたからだ。  「そうだな。今度は一緒に行こう」  「はい。ありがとうございます。そうだ、旦那様が戻ったら黎様に話があるとおっしゃってましたが……」  黎は嫌な予感がした。二十七歳になったばかりだが、女性を回りにまったくおかない自分を心配して、見合い話をまたもってきたのかもしれない。自分とは正反対な父は女性が大好きだ。  
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