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「お気になさらず。そのマフラーは新品です。先ほど母からもらったものなのでね。今僕はこの通りしているマフラーがありますので、良かったらその新品を使って下さい。それにここは寒いですよ。そのコートは襟がないのでスカーフがないとさぞかし寒いでしょう」
「ありがとうございます。でも、お返ししないといけないし……ハ、ハックション!」
彼女はまた身体を折ってくしゃみをしている。
「もし、時間があるようならこの近くのカフェで温かいものでもどうですか?日本語で話すのも楽しいのでね。身体をあたためた方がいいんじゃないかな?」
彼女は少し考えていたが、にっこり笑ってうなずいた。
黎は彼女をエスコートしてカフェまで案内した。
カフェへ入ると、向かい合って座った。
お互い何故か同じ銘柄のアールグレイの紅茶を選んだ。
「……あ、美味しい。身体が暖まるし、手も温かくなったわ」
両手でカップを持って手を温めている。
白い綺麗な手に目を奪われた。
正面から彼女の顔をしっかり見て初めて気付いたが、どこかで見た気がする。
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