新たな事業

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 自分よりも正直優秀かもしれないと会社に入れて最初の仕事を任せたときに気付いた。驚いたのだ。周囲も黎の素質を手放しに褒める。おべっかでないのはその成果をみればわかるのだ。  「黎。それはいい考えかもしれん。俺には思いつかないし、お前がそういったことを好きだから思いついたんだろうが、着眼点がいい。社交にもいいし、宣伝になり、新しい顧客層の開拓に繋がりそうだ」  黎は父を口説き落とすのに、色々考えていたが、あっけなく陥落して少々驚いた。  「ありがとうございます」  「で?お前のことだから、何の当てもなく俺にこんな提案するわけがない。何かそのプロダクションとやらに当てがあるのか?」  さすが、父さん。黎はうなずいた。  「はい。実は先日ロンドンで大学の同級生に偶然会いました。彼はクラシック音楽専門プロダクションで働いている。そのコンサートも見てきました。昨年の音楽コンクールの受賞者がピアニストでロンドンの交響楽団と共演していたんです」  「……俺には、何のことやらよくわからんが、その、コンサートを企画している会社のやつが同級生なのか?」
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