新たな事業

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 黎の嬉しそうな顔を見て驚いた。何をそんなに喜んでいるのだろう?仕事のことなのに?もしや、音楽関係だからか……父は息子を複雑な思いで見ていた。  「黎。それで、見合いの件だが……」  黎は右手を挙げて、制した。  「父さん。そのことについては、遠慮します。もう少し待って下さい」  「もう少し待つとはいつまで待てばいい?」    わざと意地悪く聞いてやる。どうせ、適当に言っているんだろうからな。  「……できれば一年。お願いします」  珍しい。具体的に期限を言ってきた。ならば、それに乗るまでだ。それ以降は否やを言わせない。こちらの選んだ娘と結婚させてやる。  「ほう。そうか、一年ね。なら一年待ってやる。それ以降は俺の言うとおりに見合いしろよ」  「はい。一年は俺のために女性を探すようなことしないで下さい。噂になるのも困ります」  どういう意味だ?黎は何か考えがあるんだろうとその時気付いた。普段女っ気のない息子が何か考えている。  父として興味がないわけはない。楽しみだ。  「わかった」  そう言うと、嬉しそうにして黎は部屋を出て行った。
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