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黎は父の了承を得て、着々と計画を進めていた。
まずは、神楽にメールを送って計画を打ち明けた。
そして、プロダクション上層部がそういったことに興味があり、賛同してくれるかどうかを探ってもらった。その返事をもらうのが今日だった。
あれから会っていなかった。久しぶりに一度、ゆっくり食事でもしようと話して、四月の頭には店を予約して連絡した。
仕事のはなしもあるので、人に聞かれることのない個室を準備した。
「やあ、忙しいのに悪いな。ロンドンではありがとう」
黎は姿を見せた神楽を、笑顔で迎えた。
「いや、こちらこそ今回はいい話をありがとう。さすが、堂本。いい店だな。驚いたよ」
会席料理の店だが、少し大通りを入ったところにある。
銀座なのだが、地下へ入るのでだれも気付かないだろう。
おそらく一見さんお断りに違いないと神楽は思った。
「とりあえず、ビールでいいか?乾杯しても大丈夫か?」
女将が来たので、掘りごたつへ腰を下ろす神楽に聞く。
「ああ。今日はもう大丈夫だ」
黎がうなずくと女将は何も言わず笑顔で出て行った。
「乾杯」
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