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ふたりはグラスを飲み干した。
神楽が堂本に注ぐ。自分の分も入れる。
「驚いたよ。急に仕事のはなしを持ちかけられたから……」
神楽は黎の整った顔を見ながら話し始めた。
目にも鮮やかな料理が運ばれてきた。
ロンドン以降、パリ、フランクフルトなどを別な交響楽団と演奏で回って、最近日本へ戻ってきた。
日本料理は正直嬉しい。
「まあ、ゆっくり話すとしよう。食べてくれ。うまいぞ」
「ああ、見ただけでわかるよ」
二人は、共通の大学の知人の話、卒業後の仕事のことなど話して酒を飲み、一通り食事が終わりかけた。
「それで、君の提案だが、ウチの上層部は賛成と反対が半々だな」
「ふーん。それはどうして?」
「まあ、スポンサーに演奏活動をああしろあこうしろと指図されるのが嫌だという人もいる。以前、曲名を指定されたなど色々あったようだ」
「……なるほど。まあ、想定内だ」
「まあ、俺は賛成だ。俺が代表なら自分で営業するくらいだよ、お前の所に乗り込んで……」
黎は笑い出した。さすが、神楽。
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