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神楽も忙しいのだ。
「栗原さんは元気か?」
神楽は黎を見た。確か、メールアプリの交換もしたと聞いていたのに、連絡していないのかと驚いた。
「ああ、元気だ。連絡していないのか?」
黎はデザートを食べながら上目遣いに神楽を見た。
「していない。俺も忙しかったからな。それに彼女のホームページを見ればコンサートがしばらく海外で続いているのはわかったから、日本へ帰ってきてからにしようと決めていた」
「……そうか。友人にしてくれと言ったそうだな」
「彼女に聞いたのか?」
「ああ。悪いが、マネージャーはプライベートも最低限管理する必要があるんでね」
神楽は釘を刺したつもりだった。
「ふーん。それは、男女交際は禁止とか、どこぞのアイドルグループみたいなことじゃあるまいな?」
茶目っ気たっぷりにこちらを見ながら聞いてくる。
「いや、まさか。ただ、恋愛がうまくいかなくなったり、それに溺れて感情的になる女性ピアニストが結構いる。こちらはビジネスだ。オーケストラやチケットも一年以上前から予約が入っている。そういった理由で弾けないとか契約問題に発展する」
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