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「いや、自分で何とかするよ。明後日の夜までならこちらにいるからギリギリ間に合う」
「そうなんですね?日本へ翌日お帰りですか?」
「そうだね。その予定。君はまだいるの?」
「二日間公演なので、その翌日まではいますね」
「今は、ホテル?」
「はい、そうです」
ふたりで顔を見合わせて無言で紅茶を飲んだ。
「……あの。マフラー、お母様から頂いたっておっしゃってましたよね?お返しした方がいいと思うんです」
黎は頬杖をつきながら彼女を見る。
「そうだな。次に会ったときに返してもらおうかな?」
「次?」
「そう。コンサートに行けたら、その時にでもね……」
「え?」
彼女は困惑の表情を浮かべた。
「今はいらないよ。寒いからね、きちんと首に巻いて今日は帰りなさい。風邪を引いたらコンサートに出られなくなるぞ。オケの人や楽しみにしているお客様に迷惑をかけるだろ?」
百合はそう言われたら何も言い返せなかった。
「わかりました。お気持ちありがたく頂きます。当日受付に預けておきますね」
「いや、楽屋へ伺うから終演後待っていて欲しい」
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