序章

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 俺と紫水、俺の兄だった者の話だ。  何年前の話になるかな。  俺は明止翠嵐(めいとすいらん)、義兄は明止紫水(めいとしすい)といった。  もう知ってると思うが、腹違いの兄弟だ。弟の俺が言うのもなんだが、兄は俺とは違って物静かでいつだって優しくて、勉強も運動も出来る奴だった。  俺は努力でなんとかしてきたけれど、兄はそれこそ才能でやり遂げてきた。何でも出来たし、連れ子である俺にも優しくしてくれた。  誰よりも分かり易く勉強を教えてくれたのは兄以外居ないと言っても良い。。友達にも恵まれて、非の打ち所がない、本当に良い兄だった。  だが、その兄は段々と何事にもやる気を出さなくなった。  登校もする勉強もする。だが、いつも上の空だった。習っていた剣道でさえ、わざと手を抜いて自ら進んで主力から外れることが増えた。  ……、……。  そう、あれは蝉が鳴かない寂しい夏だった。
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