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「まだ。……いや、決まっているんだろうな」
その言い方はまるで自嘲のようにも感じられた。
自分を卑下した厭な笑い方だ。紫水はよくこの表情を見せる。剣道部入部の際、賞状を貰う際、教師から褒められた時でさえ、喜べば良いのにそこには影がある。
「なぁ、紫水。ちゃんと言わないと高校受験の時みたいに勝手に決められるぞ?」
俺は紫水の前に立ち塞がって声を荒らげる。
兄の高校受験はほとんど両親が決めた。紫水は既に何事に対してもやる気を無くしていて、募集締め切り直前になっても高校を決められずにいた。
どこの学校に行きたいか聞いても、彼は困ったように笑うだけでどれも反応は同じだった。
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