序章

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「そうだね」  両親が高校を決めた時と同じように、どこか上の空で兄は答えた。  兄の視線の先には、大きな液晶が浮かんでいる。どこにでもある液晶看板だ。俺はつられてその看板に映る広告を見た。 『家庭用アンドロの導入。お子様への教育に、トモダチに最適な新作は――……』  歌うような台詞イド。人型機械の導入はなにも珍しい物では無い。  最初こそ「『不気味の谷』は子供のトラウマを植え付ける」「生身の人間と相手をしなければ人格形成に問題が起こる」と、液晶向こうの討論で出た問題も今はもう影を潜めた。聴骨振動小型通信機器(インカム)となんら大差なく扱われている。 「気をつけるよ」  不意に兄が言う。 「前回もそう言ってた。なぁ、紫水。俺は心配なんだぞ」  俺は広告から兄へと視線を移動する。
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