りっちゃん初添乗おめでとう会

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 それから、分かりやすいひなたの合図でサプライズケーキが登場し、律は大いに驚いて喜んだ。  真ん中のクッキープレートには、『りっちゃん初添乗おめでとう!』と書いてある。  美味しそうなフルーツケーキは、ひなたに特に大きく切り分けられ、皆で改めて乾杯をした。  最初に里佳子が出てきた時はどうなることかと思ったが、思いのほか楽しい時間はあっという間に過ぎていった。いつの間にか、窓の外は嵐も通り過ぎて静かになっている。  いつしか満足したらしいひなたは、うとうとと眠そうにしていた。 「そろそろ失礼するよ」  帰り支度を始める宮原は、今日は酒を飲んでいない。 「何だ、泊まっていかないのか?」 「今日はひなたを連れて帰る。また今度な」  里佳子とのやりとりや、その後ひなたが泣いたことから帰ることにしたのかもしれない。 「あ、じゃあ僕も……」  律も立ち上がると、宮原にじろりと睨まれた。 「どうやって帰るんだ? 電車は止まってるが」 「え、あの、僕も一緒に……」  何を今さら? 行きしなも乗せてくれたのに。  すると宮原が、ふん、と鼻から息を吐いた。 「何でお前を送らないといけないんだ。お前は残って後片付けを手伝え」 「え、でも」 「大介、いいだろう? こいつは泊めてやってくれ」 「それは構わないが……」 「よし。──ほら、ひなた。帰るぞ」 「んー」  眠そうなひなたを立たせて、玄関へ向かう。  大介が、残りのケーキを詰めた箱をひなたに持たせた。 「今日はありがとうな、ひなた。今度また、だいだいもち持って行くよ」 「ありがと、大ちゃん。りっちゃんも、おやすみ」  ひなたは半分、夢の中だ。  靴を履きながら、宮原は大介に顔を寄せた。 「……明日は桃瀬、休みだから。がんばれよ」 「っ、」  律にもはっきり聞こえるように囁いた宮原に、大介が苦笑いを零す。これはもう、色々と知られていること確定だ。 「じゃあ、大ちゃんまたね。りっちゃん、また店で」  欠伸をしながら宮原と帰って行くひなたを見送りドアを閉めると、2人してしばらく固まった。
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