月島屋3号店の問題児

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月島屋3号店の問題児

          ◆  9月に入ると、月島屋の社員旅行の行程もほぼ出来上がった。  当日の出発は朝8時、月島屋の本店前に集合してもらう。  1日目の観光には、律お勧めの城を1城、コースに入れた。会長の体調も考え、天守閣に上るエレベーターが設置してある城を選んだ。敷地は広いが、見所を絞って回ればそれ程疲れない筈だ。多津乃湖へは少し遠回りになるが、近くに松茸料理の有名店もあるので昼食を兼ねて回る予定だ。  会長本人も城は好きらしく、城名を聞いて楽しみにされていると聞いた律は嬉しかった。会長のリハビリは順調で車椅子は使用しない方向だが、念のため積んでおくことになっている。  夕方に旅館へ到着後、食事までは自由散策として福美稲荷神社のもみじ祭りを各々楽しんでいただく。巫女の舞は、5時、6時、9時の3回で、それぞれ20分くらいらしい。米寿祝いの食事会が7時からなので、皆には5時か6時の舞を見てもらうことになる。  米寿祝いについては、大広間を押さえた旅館に相談してみたところ、祝い膳を用意してもらえることになった。記念撮影用に、黄色いちゃんちゃんこも貸し出してくれるらしい。米寿のカラーは、黄色だった。  2日目は朝食後に一旦街側に近い場所まで移動して、午前中に多津乃湖の遊覧船を楽しんでもらう予定だ。  希望されていた工場見学は、和菓子工場が見つからなくて、結局ひなたが初めに言った多津乃湖サブレの本社工場で大介の了承を取った。多津乃湖からは少し離れているので、2日目の午後で予定を組んである。  旅館は、結局3箇所に分かれてもらうことになった。会長は福美稲荷神社に一番近い、大広間を押さえた旅館だ。  律とバスの乗務員は旅館の空きがなく、近くの安い民宿をとった。バスの乗務員は見習いを1人連れてくると聞いたので、自分とバス会社用とで2部屋押さえてある。  行程も出来上がり、ほっとひと安心しているところに、今日は大介がサクラトラベルに顔を出した。これまでの社員旅行は、友人である宮原と個人的に打ち合わせていたらしくこちらに顔を出すことはなかったが、今回は都合がつけば必要に応じて訪れてくれる。  律としても顔を見て話ができる方が、反応も分かるのでありがたかった。
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